「俺はね、大阪とかどうかなって」
「大阪!」
「うん、大阪の名所をウロウロしたりとかさ」
頭がぼーっとしていた。二人で旅行ができるなんて。しかも大阪。大阪に住んでいる人からすれば、地元だからなんとも思わないかもしれないけど、私からしてみれば大阪は大都会。初めて行ったのは去年の修学旅行。また行けるなんて。しかも優翔と二人で。
「花音?聞いてる?」
「ああ、うん」
「という訳で、お盆に大阪でいい?」
「うん!それがいい!」
「はは、嬉しそうで良かった。二泊三日しか行けないのが残念やな」
「ううん!二泊三日も行ければ十分!」
久しぶりに会えて、離れたくなかった。それでも、明日も部活がある優翔のことを考えて話を終わらせた。
「じゃあ、お盆を楽しみにしながら夏休みの宿題を頑張る!」
「俺も、部活の指導を頑張ります!」
お互いに謎の敬礼をして、顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、またね」
「おう、おやすみ」
優翔が帰ってからリビングで一人ニヤついていた。楽しみを胸に閉まって宿題を始めた。旅行に行けることを楽しみに宿題を頑張った。いつもなら訳が分からなくなってしまう数学も、スラスラと解けた。
今日からお盆まで、毎日ウキウキしながら過ごしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!