飛行機の中は家族連れが多く、小さな子供が多かった。飛行機に乗って30分位たった頃、隣にいる優翔から寝息が聞こえてきた。毎日部活で、普通に先生としての仕事もあって、疲れているのだろう。その寝顔があまりにも可愛くて、大阪に着くまでの間に何枚か写真を撮った。
「着いたなー!大阪!」
大阪に着いて目を覚ました優翔は、ぐっすり眠っていた分少し元気が出ていた。
空港から予約したホテルまでタクシーで向かった。その時のタクシー運転手さんに、兄妹か?と聞かれた。優翔が、いや、違うんです、と答えると、カップルか?と少し驚きながら聞かれた。優翔が、はい、と答えると、運転手さんはかなり驚いていた。やっぱり知らない人から見れば兄妹に見えるのか。
ホテルについて部屋に案内してもらった。荷物を置いて、大阪の街を歩いてみた。いつもとは違う環境にドキドキしていた。
「人、多いね」
「うん」
二人でゆっくりお店を見て回った。田舎にはない店や、本物の関西弁に感動していた。
歩いていると、人とぶつかりそうになることが多く、右によったり左によったりしていた。前から来る女の人とぶつかりそうになり左によった時、優翔と肩がぶつかった。その勢いで私の左手と優翔の右手が少し触れた。さっきまでの距離感に戻そうと、優翔から離れようとした時、私の左手は優翔の右手に捕まった。
「!!」
驚いていて優翔を見上げた。優翔は私の視線に気づいているはずなのに、私の方は見なかった。ただ、顔を赤くしていただけだった。繋いだ手から体がだんだん熱くなるのがわかった。
「やっぱり夏は暑いね」
「夏だからな」
そう。夏だから。夏だからこんなに暑いんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!