第54話

好きだけど。好きだから。
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2017/12/27 09:24
どれくらいの間だったのかは分からない。一秒にも満たない触れるだけのキスだったような気もするし、すごく長い間キスしていたような気もする。

とにかく、キスした。これだけは分かった。

別にキス自体は初めてじゃなかった。初めてのデートの時、プリクラをとる時にキスされた。でも、その時はほっぺだった。でも、今私がしたのは唇。

私よりも優翔の方が驚いていた。お互い何も言わない、静かな時間が流れた。これまた、どのくらい時間が経ったのかは分からなかった。

体は向き合っていたけど、目線は交わらなかった。恥ずかしさで私が下を向いていると、優翔が動くのがわかった。ドン引きされた?それとも、何もなかった?不安と恥ずかしさで心臓の音が大きく聞こえた。

じっとしていると、優翔から抱きしめられた。優翔の方が大きくて、包み込まれる形になった。顔は見えないけど、優翔もドキドキしているのだろう。少し震えている。

「好きだよ。好きだけど」

頭の上から優翔の声がした。

「好きだから、今は何もしない」
「…え?」
「今すぐどうにかしたいけど、好きだから、しない」

優翔の言ってる意味が、わかった。私だってそれなりの知識はある。

「我慢出来なくても、今は、手繋いで、ハグして、キスするまでで終わり」
「……うん」
「好きだから」

優翔は、私に伝える、というより自分に言い聞かせていた。我慢させてしまっている。私がまだ子供だから。

「我慢させてごめん」

小さな声で言ったけど、優翔には聞こえたらしかった。

「ううん、違う。花音とずっと一緒にいたいから。その為には大事なこと」

いくら口ではそんなことを言っても、我慢させてしまっているのは事実。優翔がさっき「俺でいいの?」なんて聞いてきたけど、それは私のセリフだ。

「私でいいの?」
「え?」

心の中で思っていたことが口から漏れてしまっていた。

「優翔の方こそ、私でいいの?」
「当たり前じゃん」
「15歳で中学生で、生徒だよ?まだ、子供だから優翔にたくさん我慢させてる」

こんなこと言ったって、何にもならない。優翔を困らせてしまうのに。

「ごめん、花音もこんな気持ちだったんだ」
「……なに?」
「俺がさっき、俺でいいの?って聞いた時、こんな気持ちだったんだなって思って」
「…そうだよ」

私を抱きしめている優翔の腕の締め付けが強くなる。

「ダメなわけないよな。好きなんだから」

そのまま「んーー」と優翔が小さくうなった。抱きしめていた腕を離して、今度は優翔からキスされた。

「うん、おやすみ」
「……ぅ、ん」

ベッドの電気も消して、部屋が真っ暗になった。

優翔の表情は確認出来ないけど、真っ赤になっているだろうか。

少なくとも私は真っ赤になっている。


その日、夢を見た。私と優翔と子供の3人で楽しく笑っている夢だった。






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