次の日、目が覚めると、優翔はまだ寝ていた。起さないように気を付けながらベッドから降りた。自分のスマホを持って、気付かれないように寝顔を撮った。私が満足して、昨日撮った写真から眺めていると、
「また盗撮ー」
という声が聞こえた。
「起きてたの!?」
慌ててスマホを閉じると、ニヤニヤした優翔が横になったままこっちを見ていた。
「寝顔を撮るなんてー、変態ですなー」
「ち、違っ!」
変態、と言われ慌てる私を楽しそうに笑いながら見ている。ベッドから降りてきて自分のスマホを手に取った。
「そんなことだろうと思ってー」
優翔が見せてきたスマホの画面には、
「あっ!!」
私の寝顔が写っていた。
「なんでっ!?」
私の驚く姿を楽しそうに笑っている。
「実は、花音が起きるよりも先に、目が覚めてたんだよねー。それで、花音なら俺の寝顔を盗撮してくるんじゃないかと思って、先に盗撮してましたー」
さっきからずっと楽しそうに話している。
「ねえ、私の寝顔消して?」
自分の寝顔ほど、見たくないものはない。そもそも可愛くない顔が、余計に可愛くなくなっている。
「俺のも消してくれるならいいけど?」
「それは…」
消したくない。だって、滅多に見れない顔だよ?と、言いたいけど、恥ずかしくて言えない。
「ね?俺も消したくないの、分かるでしょ?」
優翔の言葉に素直に頷く。
「というわけで、これは大切に保存させていただきまーす」
本当は消してほしいけど、仕方なく諦める。
それから、私がトイレに行ってる間に優翔が着替えて、優翔がトイレに行ってる間に私が着替えて、朝ごはんを食べた。
「荷物も、まとめよっか」
「あれ?もう1回ここに泊まるでしょ?」
「ん、あー、いや、うん。とりあえずまとめて」
あれ?二泊三日だから、もう1回ここに泊まると思ってたんだけど、違うのかな?
「ここ、泊まんないの?」
私の質問に「まあまあまあ、ね?」という答えを返され、結局どうなるのかは分からないまま、ホテルを出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。