「やっとついたな」
優翔のその一言で改めて実感する。本当に来たんだ。
「…うん」
「ん?どうかした?」
「嬉しいなーって思って」
「そか、良かった」
へへ、と二人で照れ笑いしながらチケットを行列に並ぶ。好きな人となら、いつもは面倒くさくなる行列の時間すらも好きになれる。
長い行列を終えて遂に、中に一歩足を踏み入れる。
「よっしゃ、どこから行くか?」
優翔もいつもよりテンションが高くなっているのが分かる。
「まずは…」
ミニオン!の言葉が優翔と被る。お互い顔を見合わせて驚く。と同時に笑い出す。あーっ、もう!幸せすぎる!
ミニオンに向けて歩き出す。少し歩いたところで優翔が止まった。何かあったのかと思い振り返ると、すぐに近づいてきて、そのまま歩き出した。
いや、正確には私と手を繋いで歩き出した。
優翔は、手を繋ぐ時、いつも急に繋いでくる。繋ぎたいなら繋ぎたいと、言ってくれればいいのに。いや、言われたら恥ずかしくなって、緊張して、うまく繋げなくなるかもしれない。
まあ、手を繋げるならなんでもいいや!
そんな事を考えながら、二人で歩く。
「ふふ、ほんっとに楽しそうだね」
優翔が私を見下ろしながら笑う。私の考えていたことがバレてしまったみたいで、恥ずかしくなる。
「優翔は?楽しい?」
優翔を見上げて聞く。優翔は顔を真っ赤にして答えてくれる。
「うん、ちょー楽しい!」
そんなこんなで、ミニオンまでたどり着き、そこからまた、行列に並ぶ。
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気づけばもう日は沈み始めていた。楽しいと時間が過ぎるのが早いんだと、改めて思う。
「もう暗くなってきたね」
少し残念そうに呟くと優翔が頷く。
「帰ろっか」
優翔の言葉に私も頷く。だけど、
「今日はどこに泊まるの?昨日のホテルじゃないんでしょ?」
昨日泊まっていたホテルは一泊分しか予約していなかったようで、今日どこに泊まるのかは聞いていない。
「だいじょーぶ!ちゃんとホテルとってあるから」
そう言うと、「はい、はぐれないでねー」と言って私の手を握り、出口に向かって歩き出す。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。