第60話

二学期だ。
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2018/01/04 09:31
長かった夏休みも終わり、始業式を迎えた。

「かのーん!!ひさしいねー!!」

教室に入ると、色の黒くなった舞子が抱きついてきた。

「舞子!久しぶり!てか、黒くなった?」

部活を引退した運動部の3年生は夏休み明けから白くなる。先輩達からそう言われてきて、私達も希望を持っていたのに、舞子はさらに黒くなっている気がする。

「うーん!海とか海とか海とか!行ってたら黒くなったよね!」

まだ夏休み気分が抜けきれていないようで、テンションが異常に高い。

「そっか、夏休み楽しかったんだね」
「もち!花音は?」
「わたしも、楽しかったよ」

『優翔と旅行に行けたから』なんて言えるはずもなく、黙っておく。

「受験生って言ってもさ、夏休みは別だよね!」
「いや、それとこれとは別じゃ…」
「何言ってんだよ、こら」

大きな声で楽しそうに話す舞子の後ろから先生が来た。

「げっ!甲斐先生っ!?」

舞子が慌てて否定する。

「いや、ね?違くて、ほら、あれ、冗談?ですよ?ね?」
「ね?って、誰に聞いてんだよ。自分のことだろ?」
「あーいや、はい、そうですそうです。冗談ですよ」

明らかに挙動不審な舞子に先生がわざとらしくため息をつく。

「ほらー、全員座れー」

先生の合図で全員席につく。

「はい、まずは、全員怪我もなく始業式を迎えられたこと、良かったな」

先生の笑顔に私達も頷く。

「こうして見てると、部活引退してから遊びに一生懸命だったやつ、勉強に一生懸命だったやつ、夏休みまで部活してたやつ、色んなやつがいた事が色の黒さで分かるかな」

冗談混じりの先生の言葉に私達も笑う。

「さっき周りにいたやつはわかると思うが、佐藤は遊びに一生懸命だったんだろ?色が黒いから良くわかる」

先生から急に話を振られて、舞子が驚く。でもすぐに、

「夏休み、ちょー楽しかった!」

と、教室全体に聞こえる声で答えて皆を笑わせる。

「うんうん、それはいいことだけどな、お前ら全員、受験生なんだから、夏休みから受験勉強してるやつはその分の結果が出るし、佐藤みたいなやつは、その分の結果が出る」

舞子が苦い顔をする。

「いいかー、これから先は、行事もあるけど、受験が一番大事な行事になってるからな。俺たちは、言いたくなくても、お前らに耳にタコができるくらい受験だ、受験だ、って言い続けるからなー」

何人かが「えー」と口にする。口にしていない生徒の大半も思っていることは同じだろう。

「よーし、という訳で、始業式あるから体育館行くぞー」


今日から、二学期だ。

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