第69話

おめでとう。
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2018/01/09 16:49
楽しかった体育祭も、ついに終わりを迎えた。私たち赤組は、嬉しいことに優勝できた。大樹の頑張りが認められたみたいで、すごく嬉しかった。

「応援団長努めさせてもらった、熊田大樹です」

閉会式が終わって、応援団長から最後の挨拶。大樹らしい、かっこよくて、でもカッコつけてない言葉だった。その目には少し涙が浮かんでて、つられて舞子は大号泣してた。

「赤組、サイコーでした!」

かっこいい笑顔で挨拶は終わった。


「大樹も舞子も、お疲れ様」

片付けが終わって、今まで通りの姿に戻ったグラウンド。その端っこで、私たち3人は話していた。

「なーんか、あっという間だったなー」

大きく伸びをして、舞子が座り込む。

「こうやってさ、どんどん終わっていくんだよねー」

砂に絵を描きながら、呟く。

「そういえば、借り物競争の時、陸くんとなんか話したの?」
「そういう佐藤こそ、航大となんか話したのかよ」

舞子は大樹からの質問を無視して続ける。

「謝りたい人、だったよね?謝れた?」
「気になる人、だったよな?告白できたのかよ」

お互いに話を譲らない。

「放送委員無視して、陸くん連れてどこ行ってたの?」
「航大連れて、どこ行ってたんだよ」

私を挟んで会話じゃない会話を続ける二人。

「もう、全然会話になってないじゃん。私が聞くから、ちゃんと答えて」

仕方なく、私が仲裁に入る。

「二人とも、ちゃんと告白できましたか?」

二人が頭を上下に振る。

「素直でよろしい。次の質問です。返事はどうでしたか?大樹からどうぞ」

少しの間があって、ゆっくり口を開く。

「…謝ったら、いいよって。こっちこそごめんって言ってくれて。それから、好きだ、付き合いたいって言ったら…」

そこで一旦言葉が止まる。

「……こちらこそって…付き合うことになりました…」

珍しく恥ずかしそうに照れる大樹。

「おめでとう、良かったね」

私の言葉に笑顔で頷く。心なしか幸せそう。

「次は舞子、どうぞ」

大きく息を吐いて、話し始めた。

「あの後、ちゃんと言った。気になるっていうのは、好きな人って意味だってこと」

その時のことを思い出しているのか、目を閉じる。

「そしたら、驚かれて、俺から言いたかった、って……」

そこまで言うと、とびきりの笑顔になる。

「俺も好きだって!付き合うことになっちゃった!」

勢いよく立ち上がって叫ぶ。舞子の笑顔は、周りの人を幸せにする力がある。

「おめでとう!」

そのままの勢いで舞子が抱きついてくる。大樹も巻き込んで、3人でくっつく。

「私、花音と大樹と、出会えてよかった!ありがとう!」

WANIMAの歌詞みたいな言葉を、恥ずかしげもなく言う舞子。

嫌そうな顔をしながらも、何も言わずくっついたままでいてくれる大樹。



傾き始めた夕日に照らされて、私たちの体育祭は幕を閉じた。



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