第90話

青いアパート。
114
2018/03/16 16:54
クリスマス当日。昨日の夜は、なかなか寝れなかった。別に、変な意味じゃなくて。

優翔の家に行ける。そう思うと、どんな感じなんだろうって、いろんな妄想が膨らんでなかなか寝られなかった。

「もうすぐ着くよ、あと3分くらいで」

隣で運転する優翔。その姿は、改めて付き合ってることを実感させてくれる。



「はい、着いたよ」
「おぉ……」

着いたのは、青いアパート。

「言ってたほどボロくないじゃん」
「いや、近くで見ると、結構ボロいよ?」

車から降りる。今日はいつもより寒い。一気に体が冷える。

優翔に着いていって、部屋まで行く。優翔の部屋は2階の左から4番目だった。

「狭いところですがどうぞ」
「おじゃまします」

玄関を入って右側に台所、左側にはトイレとお風呂。少し進んで扉を開けると、リビングがあって、隣にもう一部屋。そこはベッドがあるよー、ってニヤニヤしながら教えてくれた。

「どう?結構片付いてるでしょ?」
「ふふ、でもなんか、優翔っぽい感じする」
「?どういうことだよ」
「んー、わかんないけどなんか」

その後、昨日言った通り特に何かをする訳でもなく、ただ一緒にいてくだらない話をした。何も考えず、ゆっくりと過ぎる時間が楽しくて名残惜しかった。

「優翔?めんどくさいこと聞いてもいい?」
「ん?なに?」
「私さ、高校行けなかったらどうすればいいんだろう」
「どうしたの、急に」
「んー、急じゃないよ。この前お母さんとお父さんと会った時から、ずーっと考えてた」
「あー、お金のこと?」
「うん、高校は義務教育じゃないから、絶対行かないといけない訳じゃないけど、今どき中卒じゃ生きてけないよね」
「大丈夫だよ、花音だったら奨学金も受けれるだろうし」
「そうだけどさ…」
「まだ何か不安?」
「学校の行事は誰も来てくれないし、部活に入ったら、送迎だってしてもらえないだろうし…」
「大丈夫、そういうのは学校側が配慮してくれるもんだよ」
「うん……」
「それに、もしなんかあっても、俺がいるでしょ?」
「でも、優翔は学校の先生だから」
「だから?」
「忙しいし、迷惑になるじゃん」
「うーん、でも大丈夫だよ」
「なんで?根拠は?」
「根拠はないけど、大丈夫だよ。何があっても俺と花音なら乗り越えられる、ってね」
「……うん」
「えー、なんで泣いてんのー」
「…泣いて、ないもん」
「ほら、よしよし」
「………」
「全く、可愛いんだから」
「……る、さい」
「はいはい」

あー。幸せだなぁ。


プリ小説オーディオドラマ