12月に入ってからは、あっという間に時間が過ぎていった。特にこれと言った大きな行事もなく、気がつけば終業式を迎えていた。
「いいかー?お前達は受験生だ。この冬休みでどれだけ頑張ったかが、最終的な結果に繋がると思えよ?」
長かった校長先生の話も終わり、それぞれの教室で先生の話を聞いていた。
「冬休みの課題、始業式に全員分揃うと、俺は信じてるからな?」
課題忘れの常習犯と、がっつり目を合わせて脅しをかける。皆から小さな笑いが起こる。
「でも!一番は、このクラス全員が健康で始業式に揃うことだから!」
先生の話も終わり、挨拶をする。
「『明日から冬休み』。なんていい響き!」
赤いマフラーを巻き、白い息を吐き出しながら、隣を歩く舞子。……ちなみにこのマフラー。航大くんから貰ったんだって。
「でも、舞子は勉強しないとでしょ?」
「いやいや!勉強するよ!もちろん!」
慌てて「そうだよ、勉強、勉強!」と言い出す舞子。遊ぶことしか考えてなかったな。
「そーいえば、クリスマスは?航大くんと?」
今年は、クリスマスの2日前に学校が終わったから、一緒に過ごすことも出来る。
「んー?いやぁー?うふふーええー?」
「………………キモいよ」
明らかに上機嫌な態度。一緒に過ごすのが丸わかりだ。
「どっか行くの?」
私の問いかけに、ニヤついた笑顔のまま、大きく頷く。幸せオーラが溢れすぎている。
「どこ?」
中学生だと、行ける場所は限られてくる。校則の厳しいうちの学校だと余計に。
「……………イオン…」
「まぁ、そこぐらいしかないよね」
この辺の中学生が遊びに行くと言えば、バスで10分のところにある、イオンモール。残念ながら、ここは都会じゃないから、ここぐらいしかない。
「まぁ、楽しんできてよ」
「もちろん!!」
舞子の笑顔を見ていると、羨ましくなる。私も、優翔と一緒にどこか行きたい。だけど、先生達には、冬休みなんて関係ない。普通に学校に来て、仕事もあるし、先生によっては部活もある。
私から誘ってみればよかったんだけど、そういうことを考えると、なかなか誘えなかった。
『明日から冬休み』
別に嬉しくも何ともないや。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。