第87話

赤いマフラー。
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2018/03/01 08:38
12月に入ってからは、あっという間に時間が過ぎていった。特にこれと言った大きな行事もなく、気がつけば終業式を迎えていた。

「いいかー?お前達は受験生だ。この冬休みでどれだけ頑張ったかが、最終的な結果に繋がると思えよ?」

長かった校長先生の話も終わり、それぞれの教室で先生の話を聞いていた。

「冬休みの課題、始業式に全員分揃うと、俺は信じてるからな?」

課題忘れの常習犯と、がっつり目を合わせて脅しをかける。皆から小さな笑いが起こる。

「でも!一番は、このクラス全員が健康で始業式に揃うことだから!」

先生の話も終わり、挨拶をする。

「『明日から冬休み』。なんていい響き!」

赤いマフラーを巻き、白い息を吐き出しながら、隣を歩く舞子。……ちなみにこのマフラー。航大くんから貰ったんだって。

「でも、舞子は勉強しないとでしょ?」
「いやいや!勉強するよ!もちろん!」

慌てて「そうだよ、勉強、勉強!」と言い出す舞子。遊ぶことしか考えてなかったな。

「そーいえば、クリスマスは?航大くんと?」

今年は、クリスマスの2日前に学校が終わったから、一緒に過ごすことも出来る。

「んー?いやぁー?うふふーええー?」
「………………キモいよ」

明らかに上機嫌な態度。一緒に過ごすのが丸わかりだ。

「どっか行くの?」

私の問いかけに、ニヤついた笑顔のまま、大きく頷く。幸せオーラが溢れすぎている。

「どこ?」

中学生だと、行ける場所は限られてくる。校則の厳しいうちの学校だと余計に。

「……………イオン…」
「まぁ、そこぐらいしかないよね」

この辺の中学生が遊びに行くと言えば、バスで10分のところにある、イオンモール。残念ながら、ここは都会じゃないから、ここぐらいしかない。

「まぁ、楽しんできてよ」
「もちろん!!」

舞子の笑顔を見ていると、羨ましくなる。私も、優翔と一緒にどこか行きたい。だけど、先生達には、冬休みなんて関係ない。普通に学校に来て、仕事もあるし、先生によっては部活もある。

私から誘ってみればよかったんだけど、そういうことを考えると、なかなか誘えなかった。

『明日から冬休み』

別に嬉しくも何ともないや。

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