「おっはーよーうっ!」
朝、登校中に後ろから強い衝撃を受けた。
「うぉっ!」
「だははは!変な声!」
衝撃の正体はもちろん、
「舞子のせいでしょ…」
「ははは!ごめん、ごめん!」
舞子はどうしてこんなにも朝からハイテンションなんだろう。
「今日さ!午前中で終わりだよね!」
「いや、授業が午前中で終わりなだけで、学校自体は午後まであるじゃん」
文化祭まで一週間。今日からは部活動も休みで、午後からの授業は全部文化祭の準備時間になる。
「つまり、午後からは遊ぶってこと!じゃん!」
だからテンションが高かったのか。いつもに増して。
教室に入ると、みんなのテンションがいつもより高いのが分かった。きっと今日から一週間、ずっとこんな感じなんだろうな。
「はぁ……」
つい、ため息をついた。昨日のこと、先生の前では表情に出さないようにしたけど、バレなかっただろうか。そんな気持ちと同時に、気づいてほしいという、自分勝手な考えも生まれる。
しばらくすると、いつもと同じように先生が入ってきた。
「いいかー?今日から文化祭まで一週間になりました。だから、午後からは準備時間ということで、授業はない」
ここまで言うと、何人かが「よしゃっ」と小さくガッツポーズをした。
「はい、今喜んだやつは午後からも授業でーす」
冗談を交えながら話を進めていく先生は、いつもと変わらなかった。昨日のこと、先生の中では終わったことになっているんだ、と思うとほっとしたし、辛くもなった。
「じゃあ、今日も一日頑張ってくぞー」
我に返った時には、先生の話は終わっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。