第81話

世界一の幸せ。
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2018/02/12 01:08
「これ、一回外していい?」

せっかく優翔が付けてくれたネックレス。だけど、じっくり見たい。

「ん、外してあげる」

優翔の指が私のうなじに触れる。付けてもらった時も、今も、すごくドキドキする。

「はい」
「ありがとう」

ネックレスは、翼の形をしたものが付いている。

「すっごい綺麗…」

思わず言葉が漏れる。

「ちなみになんだけど……」

優翔が自分の首元を触る。

「お揃いです」

ハイネックを着ていたから分からなかった。優翔の首にも私と同じものが付いていた。嬉しくて、嬉しくて、また泣きそうになる。

「いつか、ちゃんとしたやつ、買うから」

ありがとう。その言葉だけじゃ足りない。でも、どうやって伝えたらいいのか分からない。

だから、とりあえず、優翔の肩に寄りかかってみた。

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誰もいない家。さっきまで隣にいた優翔を懐かしく感じる。

だけど、世界一の幸せ、っていうのは長く続かない。一回世界一になっちゃったら、あとはもう落ちるばっかりだ。

「……電話…?」

私のスマホに、電話がかかってくるのは珍しいことだ。普段はLINEしか使わない。画面を見ると、そこには名前は書かれていなかった。

「………もしもし」

恐る恐る電話に出た。もし、ヤバいやつだったらすぐに切ろう。

「もしもし?」

……え?だれ?1回声を聞いただけでは誰か分からなかった。

「花音?」
「えー、っと……」

聞いたことがある声。だれだっ……あっ。この声……

「お母さんだけど?」

その瞬間、体が固まった。え?なんで?お母さん……?

「ちょっと?聞こえてるの?」
「あ…うん。なに?」

できるだけ平然を装って答える。

「来週、そっち行くから」
「…………え?」

なんで?だって、お母さんは私の顔なんてもう見たくないんでしょ?

「どう、して?」

声が震える。

「え?あんた今年で中学校卒業だよね?」
「そう、だけど」
「高校行くのかとか、決めなきゃでしょ」

あぁ、そっか。高校って必ず行けるわけじゃないんだよね。高校行くって、勝手に思ってたけど、行けるとは限らないのか。

「もし、高校に行くんだったら、誰がお金払うと思ってんの?」
「………………」

はぁー、というため息と、面倒くさそうなお母さんの声。そうだよね。私、迷惑なんだ。

「だから、来週はあの人も来るから」
「あの人……?」
「言わせないでよ。考えればわかるでしょ?」
「あぁ…」

お父さんのこと…か。「じゃあね」それだけ言って、電話は終わった。


来週……。"元"家族が集まる。

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