「これ、一回外していい?」
せっかく優翔が付けてくれたネックレス。だけど、じっくり見たい。
「ん、外してあげる」
優翔の指が私のうなじに触れる。付けてもらった時も、今も、すごくドキドキする。
「はい」
「ありがとう」
ネックレスは、翼の形をしたものが付いている。
「すっごい綺麗…」
思わず言葉が漏れる。
「ちなみになんだけど……」
優翔が自分の首元を触る。
「お揃いです」
ハイネックを着ていたから分からなかった。優翔の首にも私と同じものが付いていた。嬉しくて、嬉しくて、また泣きそうになる。
「いつか、ちゃんとしたやつ、買うから」
ありがとう。その言葉だけじゃ足りない。でも、どうやって伝えたらいいのか分からない。
だから、とりあえず、優翔の肩に寄りかかってみた。
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誰もいない家。さっきまで隣にいた優翔を懐かしく感じる。
だけど、世界一の幸せ、っていうのは長く続かない。一回世界一になっちゃったら、あとはもう落ちるばっかりだ。
「……電話…?」
私のスマホに、電話がかかってくるのは珍しいことだ。普段はLINEしか使わない。画面を見ると、そこには名前は書かれていなかった。
「………もしもし」
恐る恐る電話に出た。もし、ヤバいやつだったらすぐに切ろう。
「もしもし?」
……え?だれ?1回声を聞いただけでは誰か分からなかった。
「花音?」
「えー、っと……」
聞いたことがある声。だれだっ……あっ。この声……
「お母さんだけど?」
その瞬間、体が固まった。え?なんで?お母さん……?
「ちょっと?聞こえてるの?」
「あ…うん。なに?」
できるだけ平然を装って答える。
「来週、そっち行くから」
「…………え?」
なんで?だって、お母さんは私の顔なんてもう見たくないんでしょ?
「どう、して?」
声が震える。
「え?あんた今年で中学校卒業だよね?」
「そう、だけど」
「高校行くのかとか、決めなきゃでしょ」
あぁ、そっか。高校って必ず行けるわけじゃないんだよね。高校行くって、勝手に思ってたけど、行けるとは限らないのか。
「もし、高校に行くんだったら、誰がお金払うと思ってんの?」
「………………」
はぁー、というため息と、面倒くさそうなお母さんの声。そうだよね。私、迷惑なんだ。
「だから、来週はあの人も来るから」
「あの人……?」
「言わせないでよ。考えればわかるでしょ?」
「あぁ…」
お父さんのこと…か。「じゃあね」それだけ言って、電話は終わった。
来週……。"元"家族が集まる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。