第86話

DEATH。
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2018/02/24 01:57
しばらく涙が止まらなくて。だけど、先生は何も言わずに抱きしめてくれていた。

「……ん、も…ぅ、だい、じょうぶ…です……」

呼吸も落ち着いてきて、先生から体を離す。

「全くもう。花音はね、頑張り過ぎだよ?色々と」

優しい言葉に、また泣きそうになる。

「あらららら、目も真っ赤に腫れてんじゃん」

そう言いながら、私の涙を拭ってくれる。恥ずかしいけど、今は嬉しい感情の方が勝っていた。

「そんなに腫れてちゃ、教室戻れないでしょ?もう少し、ここ居ていいから」
「……………ありが、とう、ございます」

それからしばらくの間、また椅子に座りなおして、相談室で先生と雑談していた。私のことを気遣ってくれているのが伝わってきた。

「先生、本当にありがとうございます」

机におでこをぶつけて、礼をした。

「いいの、いいの。俺たちの仕事は、勉強教えるだけじゃないんだから」

そう言って、私の頭を撫でてくれた。私が頭をあげると、ぶつけたおでこに手を当てて、笑ってくれた。

お互いにニヤニヤしながら照れ合う、という変な空気が流れていたところで、チャイムがなった。

「お、うん。目の腫れもだいぶ引いてるから、もう大丈夫だろ」
「はい」

私は、先生からもらったプリントを持って相談室を出た。

「ぬぁー!かのーん!どこ行ってたのー!」

教室に帰ると、黒板に大きく『DEATH』と書いている舞子がいた。

「うん、ちょっとね。舞子はなに?自殺?悩みがあるなら聞くけど?」

私が軽く言うと、その隣にいた航大くんが説明してくれた。

「いや、いよいよ受験だから、昼休みに少しずつ勉強始めよう、って言ったんだけど、勉強が嫌すぎて黒板にこんなことを…」

言葉から優しさが滲み出ている航大くん。これは、舞子も幸せ者だな。

「違うっ!最初はちゃんと勉強してたけど!航大が何言ってるのか、全然わかんない!」
「えー?僕ー?」

いや、見てないから分からないけど、航大くんはわかりやすく教えてあげたんだろう。ただ、舞子にはもうちょっと易しく教えないといけなかったみたいだけど。

「うんうん、分かったから。とりあえず、昼休み終わったんだし、黒板消すよ?」

だって、だって、と言いながら黒板を消していく舞子。あれ以上簡単な教え方はないよ?と言いながら消していく航大くん。


いつまでも続けばいいのに。

もうすぐ12月。

卒業まで4ヶ月。


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