第4話

幼なじみとの距離。
157
2017/10/07 11:37
宮本 俊樹
 ん、どれどれ‥。 ‥‥わぁお。
こちらに近づき、手紙を覗き込む彼。

正直驚いた。
あなた

ね、ねぇ、これって‥告白‥?

宮本 俊樹
‥‥。 そうみたいだね。 
でも、名前書いてないよ?
その紙をよく見たが、確かに名前が書かれていなかった。
あなた

‥誰からだろう。

宮本 俊樹
まさか、物好きがいるなんて。
あなた

ちょっと俊樹! 失礼だよ?

彼の方を睨む。
すると俊樹はくすくすと笑った。
宮本 俊樹
冗談、冗談。あなたサンを小さい頃から見てたけど、告白されたの初めてじゃん。 
あなた

そ、そんなことないし!
あたし昨日告白されたもん!

つい、ぽろっと言葉が出てしまった。
いや、言うつもりではあったが、こんな形で言うことになるとは。
宮本 俊樹
‥え? ねぇ、それ本当なの? 
彼はピタッと動きが固まり、声のトーンが下がる。
あなた

ほ、本当だよ。 彼氏できたし!

宮本 俊樹
‥‥。彼氏‥? 
その人のこと、好きなの?
あなた

う‥‥‥。うん‥。

正直、遼くんのことが好きか分からない。
しかしつい肯定してしまった。
宮本 俊樹
‥‥‥‥。
しばらく俊樹は黙り込んだ。
少しだけもやもやする。
あたしが俊樹に言いたくなかったのはこのもやもやがあったからだった。

嬉しい報告をしているはずなのに、なぜこんなに空気が重いのだろう。
宮本 俊樹
そっか。 よかったね 
そう言って彼はあたしの頭をポンポンと撫でた。
その手はあたたかく、優しかった。

けれど、寂しそうに笑った。
あなた

うん。 もう半分もない高校生活、青春してみる。

俊樹はあたしにとって、とても近い存在だった。
近所のお兄さんと言えばそうだし、兄妹って言われればそれっぽいし。

ときどき、「 カップルじゃないの? 」と、聞かれることがある。
けれど、あたしたちはカップルではない。
そうなったことは一度もない。

あたしは自分の中のルールとでもいうのか、俊樹をそのように恋愛感情で考えてはいけないような気がした。

頭で、「宮本俊樹にそういう感情をもってはいけない」と命令されているようだった。

なぜそのように考えてるのかは、よく分からない。
宮本 俊樹
そういえばさ、その手紙はどうするの?
いたずらかもしれないよ。
あなた

ううん、たとえいたずらだとしてもこれは大切に持ってるよ。
しかもこの字、なーんか見たことあるんだよね‥

宮本 俊樹
そっか。 きっとその人も喜ぶね。
彼はさきほどの事がなかったかのように、パッと表情も声色も元に戻り、たわいもない話をして家が隣同士のマンションへと向かった。
宮本 俊樹
ねぇ、新しいゲーム買ったんだけど今日うちこない?
多分母さんが喜んで夜ご飯も作ってくれると思う。
あなた

ほんと? やった!! いくいく。
俊樹ってほんとゲーム好きだよねー。今日は負けないからね。

宮本 俊樹
いつも負けてんじゃん。
勝てるかなぁ?
あなた

勝てるし!
てか、さっき言ってた俊樹が言いたかったことってなに‥?

宮本 俊樹
ん、なんでもないや。
大したことないから忘れて。
あなた

なにそれ! 逆に気になるんだけど

宮本 俊樹
ははっ、いつかわかるよ
このときはまだ、俊樹とこの関係がいつまでも続くのだと、

思っていた。

プリ小説オーディオドラマ