第12話

偽りの気持ち。 2
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2017/10/15 10:47
んっ、と差し出された手に応じて彼の手を握る。


するとその手ごと引き寄せられ、目が合うとニコッとほほえまれた。

こんな優しい彼が、騙してるとか、裏切るとかないよね‥?
植草 遼
ここがあなたちゃんの家? 
マンションなんだ。
「 うん。」と笑いながら鍵を開ける。
あなた

ただいまー‥ってあれ?

お母さんがいない。
そういえば、今日は仕事で遅くなるって言ってたっけ‥‥‥‥。
あなた

お母さん仕事行ってるみたい‥

植草 遼
 ふーん、そっか。
すると遼くんはいきなりあたしを連れて部屋の中に入り、上に乗りかかってきた。
あなた

えっ、‥ちょっと遼くん‥?

植草 遼
 誰もいなくてラッキ〜って思っちゃったわ。 
ねぇ、あなたちゃん。今日はいいでしょ?
そして彼は強引に唇を奪った。
あなた

んっ‥。んん!!

突き放そうとするが、力が強くて押し返せない。
「やだ」と途切れ途切れに叫んでいるが、伝わらない。

両手で彼の動きを制止しようとしたら、片手で床に押さえつけられる。

そしてあたしのシャツのボタンをはずし始めた。
あなた

遼くん!!
‥こんないきなり‥!
やめて、ねぇ!

植草 遼
やめない。
てか、俺もう止まんないわ。
不敵な笑みを浮かべて、遼くんは動きをやめない。


そこには、あたしが見ていた遼くんはいなかった。
教室の会話も含め、気づいてしまった。

彼の目的は、最初からこれだったのかもしれないと。
きっとあたしとヤったら『賭け』に勝つのだろう。


あたしと彼に、愛などなかった。

愛華や俊樹の言ってることを素直に受け止めればよかった。


ごめん‥。


様々な感情がぐちゃぐちゃになって、
それを流すかのように、
あたしは泣いていた。
あなた

やめ‥て。 助けて、ト‥シキ。

上に乗っている彼がベルトに手をかけたとき、
タイミングよくピンポン、とベルが鳴った。

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