第13話

偽りの気持ち。 3
155
2017/10/15 11:09
ピンポン、ピンポン、とベルは鳴り続ける。
植草 遼
 チッ、うるせぇな。
このベルのおかげで彼の動きが止まった。

どんどんとドアを叩く音もする。
宮本 俊樹
あなた。 いないの? 
植草 遼
うわ、宮本かよ。
そういえば、鍵を閉めてない。
俊樹が家の前にいることに安心して、あたしはありったけの声で叫んだ。
あなた

俊樹!! 助けて!!!

植草 遼
ちょっ、静かにして。
彼は慌てて手で口を塞ぐ。

しかし声が届いたのか、ガチャっとドアを開ける音がした。
宮本 俊樹
‥ねぇ、それって合意の上?
助けてって聞こえたんだけど。
俊樹は冷酷な目つきで遼くんを睨みつける。
目があったらそれだけでやられそうな勢いだ。
植草 遼
そ、そうだよ。
俺とあなたちゃんは恋人同士だから!
宮本 俊樹
ふーん。 じゃあさ、
『賭けに勝ったらなにもらえんの?』
あなた

あ‥。

俊樹は知ってたんだ。
ってことは、あたしの予想は的中したわけで。
植草 遼
‥‥‥。
ああそーだよ。
お前がいるせいでガードが固いって言われてる佐々木あなたとヤったら3ヶ月昼メシ代奢ってもらうってね。
あっさり告白にもオッケーするもんだからさ、チョロかったわ。

あとちょっとだったのに。
宮本 俊樹
ふざけるな。‥‥‥失せろ。
早く行かないとお前をボコボコにしそうだ。
俊樹は拳を握りしめ、震えていた。
植草 遼
っ、こんな女もう冷めたわ。
そう言って植草遼は逃げるようにこの場を去った。
あなた

‥‥‥。

改めて遼くんの本心を言葉で聞いたからなのか、
涙が止まらなかった。
宮本 俊樹
ほんとはさ、この事実を知らないまま
別れてほしかった。
あなたに傷ついてほしくなかったんだ。
「見えてる。」そう言いながら彼は着ていたブレザーをあたしの胸元にかけた。
あなた

いつから知ってたの?

宮本 俊樹
植草が、なにか賭け事をしているのは知ってた。
それであなたから彼氏が植草だって聞いたとき、そこであなたが狙われてることに気づいた。
あなた

‥‥そっか。
ありがとう。そして、ごめんなさい。

宮本 俊樹
 俺こそ酷いこと言っちゃったし、
おあいこだね。
手、動かせる?
あなた

それが、身体に力が入らないみたい。

宮本 俊樹
仕方ない、嫌かもしれないけど失礼。
彼はあたしのシャツのボタンをかけて服装を整えてくれた。
嫌じゃなかった。

安心したのか、また涙がほろりと溢れた。
宮本 俊樹
怖かったよな
優しく頭をなでられる。
宮本 俊樹
最後に、守ることができてよかった。
あなた

最後‥?

宮本 俊樹
ううん、なんでもない。ねぇ、あなた。
あなた

なに?

俊樹は背中に手を回し、あたしを包み込んだ。
宮本 俊樹
しばらくの間、こうしてていい?
俊樹に抱きしめられると、こわばった身体が安心し、何よりあたたかかった。
あなた

うん。

2人は、無言のまま抱きしめ合った。

俊樹が急にこうした理由はあたしを安心させてくれるためだと思った。

でも、それだけではなかったことを後で知る。






次の日、俊樹は引っ越した。
あたしにはなにも告げずに。

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