第19話

まわり道したその先に。(最終回)
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2017/10/16 14:45
宮本 俊樹
俺は引っ越した後、彼女ができた。
あなた

‥‥‥。 そ‥っか。

彼の言葉が胸に突き刺さる。

ああやっぱり、もう遅かった‥。
目が潤む。

泣いちゃダメだ、そう思うのに、涙の準備は着々と進み、ついには頰を濡らす。
宮本 俊樹
俺は、忘れたかった。
もういつ会えるか分からない。
一方的に縁を切っちゃったしね。

だから、彼女を作ればきっと忘れられると思った。
宮本 俊樹
だけど、無理だったんだ。
あなた

‥‥?

宮本 俊樹
引っ越した後も、ずっと、あなたのこと。
あなたのことを忘れた日はなかった。

やっぱり自分の気持ちに嘘をつけなくて‥。
宮本 俊樹
彼女とはすぐ別れたよ。
あなたに会える保証もないのにさ。
宮本 俊樹
好きなんだ、今も、昔も。あなたのことが。
あなた

‥‥‥ほんと‥に?

俊樹が、あたしのことをまだ好いてくれている‥?
その事実が、夢のようで。

溢れ出てきた涙が止まらない。
宮本 俊樹
ごめん、ちょっといじわるした。
高2のとき、俺の気持ちも知らないで
あなたが急に彼氏できたとか言い出すからさ。
しかも相手は植草。

そのときの仕返し。
あなた

だから、今も彼女いるみたいな風に言ったわけ‥‥?

宮本 俊樹
‥怒った?
あなた

やっぱり殴らせて。

あなた

なんなら黙って引っ越したことも、
手紙で分かりにくい告白したことも、
あたしに直接言ってくれればこんなに遠回りしなかった。

宮本 俊樹
ごめんって。
俺だっていろいろ考えてこうしたんだよ‥。
全部裏目に出ちゃったけど‥。
あなた

いーや、やだね!
これは殴らないと気がすまない!
歯ァ食いしばれヘタレ俊樹!

宮本 俊樹
ちょっ、あなた。 
見ないうちにさらに乱暴になったの?
ごめん‥ごめんって。
拳をグーにして俊樹に近づく。
腕を後ろに引いて頬に狙いを定めたとき。

彼の腕があたしの拳を掴み、腰にも腕を回され引き寄せられた。
あなた

ちょっ‥。

そして唇にあたたかいものが触れた。
あなた

‥‥‥。

宮本 俊樹
好きだよ。もう離さないから。
宮本 俊樹
‥‥‥俺の言いたいこと終わり。 
殴っていいよ。
目をギュッと閉じる彼。

あたしはグーにした拳をゆるめ、彼に唇を重ねた。
宮本 俊樹
 ‥?!
あなた

さっきの仕返し。
あたしだって、離さないよ。
俊樹を‥幸せにしたい。

そうして見つめあって、お互い幸せそうに笑った。

時間はかかってしまったけれど、答えを見つけた2人は、
離れていた時間を埋めるかのように抱きしめあい、互いを感じた。

まわり道をしたその先に。

2人は大切なものを、みつけた。

ーEND

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