彼の言葉が胸に突き刺さる。
ああやっぱり、もう遅かった‥。
目が潤む。
泣いちゃダメだ、そう思うのに、涙の準備は着々と進み、ついには頰を濡らす。
俊樹が、あたしのことをまだ好いてくれている‥?
その事実が、夢のようで。
溢れ出てきた涙が止まらない。
拳をグーにして俊樹に近づく。
腕を後ろに引いて頬に狙いを定めたとき。
彼の腕があたしの拳を掴み、腰にも腕を回され引き寄せられた。
そして唇にあたたかいものが触れた。
目をギュッと閉じる彼。
あたしはグーにした拳をゆるめ、彼に唇を重ねた。
そうして見つめあって、お互い幸せそうに笑った。
時間はかかってしまったけれど、答えを見つけた2人は、
離れていた時間を埋めるかのように抱きしめあい、互いを感じた。
まわり道をしたその先に。
2人は大切なものを、みつけた。
ーEND
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。