前の話
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飽き性で裏切り者の少年は眠っていた。
疲れ果てて寝ていたのだ。それも五分前の話だが。少年は立ち上がり”塵”を叩き落とした。
目を擦りながら”落ちている”血塗れの死体を覗き込む。
コテンと首を傾げるが自分がしてしまった事への懺悔よりも先に出てきた言葉は誰もが予想しない言葉だった。若しくは予想できない言葉。
『ありがとう』
なんて御礼じみた”言葉”をニッコリ笑顔で言う姿は何処かヒトでは無い様な異様な雰囲気を醸し出す。
不意に自分が視線を向ければ
『やぁ?こんにちは?』
当たり前の挨拶をするように近付く。
自分は目を見開いた。少年は気付かないうちに自分の真横に居たのだ。そして耳元でこう囁いた。
『殺人鬼で何が悪い?』と妖しげな笑を浮かべて。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!