お母さんから電話が来て数分たった。いつの間にか電話は切れていた。
もう1度戻って助けないと!
懐中時計を手にして、その手を止めた。
どうやって助けよう。
悩みに悩んだ。でも、答えは一つだった。
帰る道を変えれば…大丈夫かもしれない!
懐中時計をギュッと握った。
.....今日の放課後に...!
ボタンを押す。
どんどん、巻き戻される。
教室に戻ってきた。また、あの時と同じ。
私はずかずかと勇気の所に歩いていく。
私「勇気!早く帰ろう!」
勇気の手を取り、強く引く。
勇気「ちょ、ちょっと待てよ!」
勇気は急いでカバンを取り、引かれるがままに歩いていく。
帰り道を歩いていると
勇気「そろそろ離してくれねぇか?」
私「あっ!ご、ごめん。」
私は急いで手を離す。
勇気「急にどうしたんだよ。」
私「違う道から帰ろ。」
勇気の質問を無視して違う道を歩く。
勇気「別にいいけどよ〜どうしたんだよ美夜。」
私「どうもしない!」
勇気の2歩先を歩く。
私達は何も話さずそのまま前に進む。
十字路のかどを曲がった時、
「危ない!」
誰かの声が響いた。
私「え?...」
後ろを向くと勇気の真上に赤く染まった鉄柱が落ちてきた。
一瞬、勇気の真上で時間が止まったように見えた。
勇気は鉄柱の下敷きになってしまった。鉄柱の山から赤黒い血が地面に色がっていく。
なんで!また、助けられなかった。
なんで、こんな道を通ったのかな!?
自分自身に八つ当たりをする。
私は首に掛けてた懐中時計を、服の中から取りだし、
20分前に!!.....
ボタンを押す。
巻き戻るにつれ心が痛くなる。
今度こそ、助ける!!
また、教室に戻ってきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。