“あの日”があってから、何回、勇気を助けようとしただろうか。
もう、何回“あの日”を繰り返しているだろうか。
何度も車にひかれ、落ちたり、落とされたり。
何回、勇気を見殺しにしただろうか。
この罪は二度と消えない。
私の心は、もう跡形も無くボロボロに消えてしまった。
こんな私を勇気は許してくれるだろうか。
私は夜中、部屋で1人勇気を助ける方法を探していた。
どうしたらいいのかな。
どうしたら助けられる?
私は誰でもいいから相談したかった。でも、それは叶わなかった。
何度も誰かに伝えようとした。でも、声に出そうとすると喉が熱くて、痛くて、苦しくて、もうどうすればいいか分からなくなった。
もう、、疲れた。
私はただ、勇気に想いを伝えたかっただけだった。「すき」って伝えたかっただけだったのに。何もかもが上手くいかない。
諦めようか…
そう、思ってしまう。
でも、勇気が好きだから。大好きだから。
助けたいって思える。
諦めるなんて考えちゃダメだ。
勇気はいつだってあの笑顔を忘れなかった。
私は勇気が憧れていたのかもしれないな。
友達が多い勇気と、友達が少ない私。
勇気の周りにはいつも、人がたくさんいた。
勇気の笑顔は、とても眩しい。
私は笑顔をつくるのが苦手だった。素直に笑顔になれなかった。でも、勇気の前では素直に笑顔になれていたと思う。
勇気はいつも笑顔で接してくれた。
毎朝言ってくれる「おはよう」はとても、嬉しくて、勇気が大好きだなっていつも思う。
そんな笑顔を、勇気を守りたい!
だから、私はどうなったっていい。
勇気を助けられれば…...
ふと、頭に浮かんだ。
私はどうなったっていいんだ...!
そうだよね!勇気を助けられればいいんだもん。私なんてどうなったっていい。
勇気を見殺しにして、ズタズタにされたこの心は、罪は、私自身で補えばいいんだ!
勇気の...ためだもん。
大好きな勇気を助けたいんだもん!
私は首に掛けてある懐中時計を取り出し、ぎゅっと強く、でも優しく握る。
今日の放課後に.......!!
何度も見た光景。
今日で、終わらせる!
絶対、助ける!
この言葉を何回言っただろうか…
でも、今回は上手くいきそう!
そう思えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!