また、“あの日”にやってきた。
窓から夕日が照らす。
今日で終わらせよう!
だから、また言わないとな…
「好き」って。
私が何度も言った言葉。
私「勇気。一緒に帰ろう。」
何度も見た、勇気の驚いた顔。
勇気「そうだな!美夜から誘うなんて久しぶりだな。」
何度も見た勇気の笑顔。
私「うん.....そうだね。」
私達は急がず、いつものペースで歩いた。
帰り道。
私「ねぇ、勇気。」
勇気「ん?何だ?」
あの時よりは緊張しなかった。
何故か分からないけど。していなかった。
私「あのね、私。好きなんだ。勇気のこと」
真っ直ぐ勇気を見て、笑顔で言った。
何故か、泣きそうになった。
涙が出てきそうで、必死に堪えた。
勇気は顔が真っ赤だ。
勇気「そ、そーゆーことわな。俺から言わせろよ。バカ」
私「...うん...!」
知ってるよ。知ってる。でも、ごめんね。もうすぐでお別れなんだよ。勇気
勇気「俺も、美夜が好き!」
答えは知っていた。知っていたのに、不思議と涙が出てきた。
ポロポロ流れる涙は止まらない。
私「.....知ってるよ...ばーか」
勇気に聞こえないぐらい小さい声で言った。
勇気「ちょ!何で泣いてんだよ!」
私「...なんでかな...。とても、嬉しかったから...かな?...」
勇気「なんだそれ!」
ワハハと笑う勇気。
そんな笑顔が見れなくて、うつむいてしまう。
ねぇ、勇気。
私、凄く凄く、勇気が好きだよ。
誰にも負けないくらい。
好き。
いよいよ、あの交差点に来た。
怖くなかった。死ぬんだと分かっていたけど、怖くなかった。
だって、
勇気を助けるため。
勇気を守るため。
私は勇気の全てだから。
私は勇気の後ろを歩く。
私「ねぇ、勇気。」
勇気は振り向く。
勇気「何だ?」
ニコッと笑う勇気。
この時、「あぁ、好きだな」って思った。
いつもの、勇気の笑顔。やっぱり、大好き。
その時、あのトラックが突っ込んできた。
スローモーションで時が進むように見える。
何度目だろうか。
この瞬間が来たのは。
私は勇気の腕を掴み、精一杯の力で押しのけて飛び込んだ。
スローモーションで進む時間、ゆっくりと勇気を見る。
私「ありがとう!」
私が思う精一杯の笑顔で勇気に伝えた。
その瞬間、トラックにぶちあたる。
体全身に激痛がはしる。
でもそれは一瞬だった。
激痛はおさまった。
地面には真っ赤な血。
とても、あったかい。お風呂に入っているみたいに。
血はどんどん地面には広がっていった。
とても、寒い。寒い。寒い。寒い。寒い。
クラクラする。目の前が暗い。眠くなってきた。
勇気が必死に呼びかける私の名前は聞こえなくなってきている。
私の目には、涙があった。
この涙はなんだろう。
痛くて泣いているのか?
悲しくて泣いているのか?
怖くて泣いているのか?
嬉しくて泣いているのか?
やっと助けられて泣いているのか?
私には、分からなかった。
自分のことなのに、わからなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!