ドクターヘリ出動要請を告げるホットラインが鳴り響いた。これは大規模な事故だった。
搭乗したのは白石、緋山、冴島だ。
現場には40代と思われる太った女性、30代と思われる浴衣女性。将棋倒しになった怪我人5,6人だ。
白石は病院へ連絡を入れる。
緋山は診断をしながら消防隊長に指示を出す。
再びヘリが着陸した。藤川、名取、横峯が降り立った。
白石が男性の治療が終わったとき消防隊員が叫んだ。
藤川が走ってきた。
藤川は顔面蒼白で目が泳いでいる横峯に声をかける。
横峯は駆け出した。しかし、民家の前を過ぎたところで消防隊員が叫ぶように声をかけた。
迫力に押されついていく。
しかし、横峯の目に飛び込んできたのは幼い少年の無残な姿だった。
目の当たりにした光景に横峯の頭は、真っ白になった。
葵と灰谷がヘリから降りた。
葵は民家の近くへ灰谷は藤川のもとへ急いだ。
葵が民家の前を過ぎようとしたとき、切羽詰まった声で横峯が叫んだ。
葵は民家の中へ駆け出した。
葵は足元に注意して民家の中へ入っていく。その奥に壊れた壁と山車に挟まれた少年がいた。
葵は少年のハチマキを外し、トランシーバーを取り出した。
葵が悪戦苦闘して挿管していると緋山が到着した。
2人がかりでようやく少年の挿管は成功した。
緋山のトランシーバーから名取の声が聞こえてきた。
緋山は胸騒ぎがし、表情が変わった。葵は事を察した。
レスキュー隊員に葵が切迫した表情で尋ねる。
トランシーバーから灰谷の声がした。
どうすればいい?
18時15分。
白石は携帯を取りだし、かけた。
藍沢は電話をきると、ドクターヘリに向かって走り出した。
藍沢は民家の中へ入って感動してしまった。
初めて娘の葵が治療しているのを見たのだ。葵は4年も、医者をしていると言うのに……
準備を始めながら藍沢は白石に言った。
白石はハッとなる。
藍沢の言葉が白石の心にストンと落ちていく。
白石は顔をあげ藍沢を見つめた。
白石はフッと息をはくと冴島に医療器具を渡した。
「了解」、「わかりました」
藍沢と冴島が同時に答え、葵は頷いた。
白石は急いで消防隊長のもとへ行き、言った。
藍沢と葵の巧みな手技で血腫えおどうにか取り除き、一命をとりとめた少年は山車の間から救出されるやすぐにヘリで翔北へと運ばれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!