第3話

CODE BLUE#01-1
4,245
2018/01/03 07:04
ドクターヘリ出動要請を告げるホットラインが鳴り響いた。これは大規模な事故だった。
搭乗したのは白石、緋山、冴島だ。
白石
白石
患者は何人くらいですか?
消防隊員
まだ把握は出来ていませんが、歩ける人を含めると15人程度です
白石
白石
……
現場には40代と思われる太った女性、30代と思われる浴衣女性。将棋倒しになった怪我人5,6人だ。
消防隊員
先生、こっちもお願いします!意識ありません
緋山
緋山
ここの2人は私が診る
白石
白石
頼んだ
白石は病院へ連絡を入れる。
白石
白石
負傷者は15名程度で、赤も何人か出そうです。橘先生を残して、藤川先生とフェロー3人、出来れば……葵先生を現場へ派遣してください
緋山
緋山
左上腕骨折、意識レベル3桁、呼吸も弱い。酸素とエコー
緋山は診断をしながら消防隊長に指示を出す。
緋山
緋山
そっちの足をひかれた女性は黄色タグです。後発の医者に診させます。歩ける人たちは緑タグをつけて安全な場所に集めて下さい
消防隊長
わかりました。この先のスーパーの駐車場に集めます
再びヘリが着陸した。藤川、名取、横峯が降り立った。
藤川
藤川
行くよ
白石が男性の治療が終わったとき消防隊員が叫んだ。
消防隊員
先生、山車の下に女性がいました。お願いします
白石
白石
わかりました
藤川が走ってきた。
藤川
藤川
白石!
白石
白石
この男性お願い。意識3桁、呼吸正常、お腹と骨盤はまだ診てない。私は山車の方に行く
藤川
藤川
わかった。行ってこい
藤川
藤川
名取、緋山のフォローに入ってくれ
名取
名取
わかりました
藤川は顔面蒼白で目が泳いでいる横峯に声をかける。
藤川
藤川
深呼吸してまずは落ち着こうか
藤川
藤川
君は1ブロック先のスーパーの駐車場にいる軽傷者を診てきて
横峯
横峯
は、はい……
横峯は駆け出した。しかし、民家の前を過ぎたところで消防隊員が叫ぶように声をかけた。
消防隊員
先生、怪我人です!家の中です。安全確認がとれたので中、お願いします
横峯
横峯
え……いや、でも……
消防隊員
早く!こちらです
迫力に押されついていく。
消防隊員
先生、お願いします
横峯
横峯
わかりました
しかし、横峯の目に飛び込んできたのは幼い少年の無残な姿だった。
横峯
横峯
!!……え……
目の当たりにした光景に横峯の頭は、真っ白になった。
葵と灰谷がヘリから降りた。
葵は民家の近くへ灰谷は藤川のもとへ急いだ。
灰谷
灰谷
藤川先生!
藤川
藤川
おぉ、来たか。じゃあ君もスーパーの駐車場へ行って。今、横峯が一人だから
灰谷
灰谷
はい……えっと、じゃあ
葵が民家の前を過ぎようとしたとき、切羽詰まった声で横峯が叫んだ。
横峯
横峯
葵先生、助けてください!
葵
助けてくださいじゃないでしょう。あなたは医者なの、助けるのは自分
横峯
横峯
……中の、だ、山車と家の間に……
葵
ちゃんと言って
横峯
横峯
挟まってるんです……子供が……
葵
……その子はどこ?
横峯
横峯
中です。家の中……
葵は民家の中へ駆け出した。
葵は足元に注意して民家の中へ入っていく。その奥に壊れた壁と山車に挟まれた少年がいた。
消防隊員
先生!
葵
対光反射が弱い……救出急いで下さい!
葵は少年のハチマキを外し、トランシーバーを取り出した。
葵
緋山先生、葵です。今いいですか?
緋山
緋山
いいけど、どうした?
葵
小児バッグを持って民家に来てもらってもいいですか?
緋山
緋山
OK。名取に任せてそっち行く
葵が悪戦苦闘して挿管していると緋山が到着した。
緋山
緋山
8歳?体勢厳しいね
葵
上からアプローチします
緋山
緋山
わかった
2人がかりでようやく少年の挿管は成功した。
緋山のトランシーバーから名取の声が聞こえてきた。
名取
名取
緋山先生、名取です
緋山
緋山
何?
名取
名取
出血があります
緋山
緋山
出血?どこから?
名取
名取
なんか……腰の辺りから……
緋山
緋山
腰?あんたが診てるのって浴衣の方だよね
名取
名取
あ、すいません!開放骨折の……
緋山
緋山
あぁ、そっちか……
緋山は胸騒ぎがし、表情が変わった。葵は事を察した。
葵
大丈夫です
緋山
緋山
ゴメン
レスキュー隊員に葵が切迫した表情で尋ねる。
葵
まだ、動かせませんか?
レスキュー隊員
まだかかります
白石
白石
葵先生、大丈夫?手伝うよ
葵
……え……お願いします
白石
白石
横峯さんに聞いたの
葵
そうですか
レスキュー隊員
先生、ダメです。スプレッダーで山車と壁の間を拡張しないよいけません
葵
レベル低下……?
灰谷
灰谷
葵先生!
トランシーバーから灰谷の声がした。
葵
何?
灰谷
灰谷
灰谷です。急に呼吸状態が悪くなった患者さんが……
葵
悪いってどれぐらい?サチュレーションは?
灰谷
灰谷
90%切ってます。意識が……
葵
酸素投与した?意識レベル下がってるなら気道確保して
灰谷
灰谷
……挿管するんですか?
葵
当たり前でしょ!やれるだけやって
灰谷
灰谷
は……はい……
葵
藤川先生、行けますか?
藤川
藤川
悪い。転落男性が骨盤骨折でショックなんだ
どうすればいい?
白石
白石
葵先生、悪いけどこの体勢がきついから代わってもらえる?
葵
あ、すいません
18時15分。
白石は携帯を取りだし、かけた。
白石
白石
お願い、まだいて……
藍沢
藍沢
はい、脳外科医局です
白石
白石
藍沢先生?
藍沢
藍沢
白石か?
白石
白石
頭部外傷で意識不明の少年がいるの。壁に挟まれてまだ動かせない。救出まであと30分……
藍沢
藍沢
もういい、わかった。現場に向かう
藍沢は電話をきると、ドクターヘリに向かって走り出した。
藤川
藤川
藍沢、葵ちゃんと白石は民家の中だ。頼む
藍沢
藍沢
葵もいるのか……。わかった
藍沢は民家の中へ入って感動してしまった。
初めて娘の葵が治療しているのを見たのだ。葵は4年も、医者をしていると言うのに……
藍沢
藍沢
レベルが下がったのはいつだ
白石
白石
藍沢先生!
葵
5分前に100から300まで落ちた。多分脳ヘルニアを起こしている
白石
白石
救出まで20分。病院まで持つ?
藍沢
藍沢
無理だな
葵
ここで穿頭しましょう
冴島
冴島
30代女性、救急車で搬送されました。こっちに入ります
準備を始めながら藍沢は白石に言った。
藍沢
藍沢
何してる?
白石
白石
えっ?
藍沢
藍沢
お前が一番重い患者についていてどうする。現場は指揮官を求めている
白石はハッとなる。
藍沢
藍沢
消防、救急、警察も目的は同じだ。ひとつでも多くの命を救うために仕事をしている。その方法を一番良くしっているのが医者だ。引っ張っていく人間がここでは必要なんだ
藍沢の言葉が白石の心にストンと落ちていく。
藍沢
藍沢
白石、指揮官になれ
白石は顔をあげ藍沢を見つめた。
白石はフッと息をはくと冴島に医療器具を渡した。
白石
白石
バーホールが終わって救出できたら、この子を優先で搬送して。消防とCSには伝えておく
「了解」、「わかりました」
藍沢と冴島が同時に答え、葵は頷いた。
白石は急いで消防隊長のもとへ行き、言った。
白石
白石
緑タグはバスをかりて運びましょう。
上総医大に何名まで受け入れ可能か確認してください
消防隊長
はい!
藍沢と葵の巧みな手技で血腫えおどうにか取り除き、一命をとりとめた少年は山車の間から救出されるやすぐにヘリで翔北へと運ばれた。

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