第21話

失われる記憶(1)
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2017/10/09 22:39
やがて、手術室の赤いランプは消え中からは
1人の医者が出てきた。


医者「何とか一命は取り留めたものの、いつ意識が戻るかは…」


春は、一命を取り留めたと。

だけど意識がいつ戻るのかは分からないらしい。


俺は春の命が助かったということに
涙を流し、2人も泣いて抱き合ってた。


神様。ありがとうございます。


俺は何度もお礼を言う。




暫くして、ICUから個室に移った春。

もう、すっかり傷口も治ってきたというのになかなか目を覚まさない春。


医者からは、植物人間になる可能も無いとは言えない。と言われたばかりだ。
夏
春…まだ眠ってるの?
いつもなら、毎朝俺が起こしに行くとすぐ起きてたのに…
静かに眠る春を見て俺は言う。
夏
早く起きないと、春のお母さんが用意した
ドーナツ1人で食べるよ?
少しいじわるに言っても、春の瞼は開こうとしない。
夏
ねぇ…起きてよ春…
そのまま俺は、溢れ出ようとする涙を堪え
春の手を握ったまま眠りにつく。


【夏SideEnd】



私はまるで、長い長い夢を見ているみたい。


今までの夏くんとの思い出。


一緒に星を見たよね?

一緒に遊園地も行った。

動物園に行った時、ふれあいコーナで涙を流してたよね夏くんは…

高校生になって、夏くんに寄せる想いも知った

初めてのデートだってしたよね?

まるで、思い出が沢山詰まった宝箱を開けたかのように溢れ出てくる男の子との思い出。



暗い場所に一人ぼっち。
寂しい。

ずっと1人を経験しなかった私。
隣にはいつも男の子が居た。

あれ?誰だっけ?





私の名を呼ぶ声。

私の手を握るどこか懐かしい温かさ。



私はそれに向かって暗闇の中を走る。


私は今、誰かに会いたがってる。

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