私は記憶を取り戻した。
思い出の場所で。
満天の星空の下で。
夏くんを目の前に。
そのうち、最も強く私の頭に出てきた光景。
【夏と春が幼稚園のとき】
私は幼稚園のお友達の男の子にいじわるを
されて夜、丘の上で泣いていた。
幼稚園を飛び出して、ずっと1人で。
すると、夏くんが私を追いかけてきた。
泣きやもうとしない私の隣に座って、満天に広がる星空を見上げてこう言った。
夏くんは、星空を見上げたまま私にそう言う。
私は夏くんが言った言葉が気になって
目の涙を拭きながらそう言った。
なぜか、夏くんのその言葉には妙な説得力があった。
私は、星空を見上げる。
すると、夜空に引かれる光の線。
私と夏くんは慌てて目を瞑りお願い事をする。
願い事を心で唱えた後、夏くんが聞いてきた
欲張りながら2個もお願い事をしてしまった私。
私も夏くんの願い事が気になってそう聞いた。
夏くんはそう言う。
そう言って微笑む夏くん。
その笑顔はやっぱり太陽のようだった。
私達は満天の星空の下、約束をした。
この願いが叶うようにと。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。