第20話

レオンの発情期
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2017/11/26 14:51
ツキ
ツキ
おっせーなぁー
ソラ
ソラ
たぶんもぅ作り終わって、リョウちゃんと運んで来てるよ
若干イラついている俺を宥めるように、ソラは無理やり笑って言った。
リョウの奴が大量に食ったせいで、俺はほとんど食えてない。それはソラも同じだった。まぁ、コイツはずっと話したりしてただけだが。
ツキ
ツキ
酔いもさめちまったしなぁ・・・。あいつら見てくるわ
ソラ
ソラ
えー?ボクひとり?
ツキ
ツキ
あ゙ぁ?
ソラ
ソラ
すんません
すぐ威嚇すんのは俺の悪いとこだ。そこはいつも反省している。自分の行動に呆れながらも、俺は古の間を出た。
調理場の近くに行くと、2人の声が聞こえてきた。
ツキ
ツキ
おい、メシは──
レオン
レオン
服、返せ・・・!
ツキ
ツキ
っ!?
俺は声を聞き、咄嗟に足を止めた。できるだけ見つからないように壁際に隠れ、ギリギリ見えるところからレオンを見た。
あいつはリョウに壁際に追い詰められているようで、とても怯えているように見えた。
ツキ
ツキ
おいおい・・・。リョウの奴、完全にフェロモンにやられてんぞ
さっきから、レオンから出されるΩのフェロモンが気になっていた。
普段は気にならない。というか、フェロモンは発情期にしか出さない。なら、あいつは今──
ツキ
ツキ
発情期かよ・・・っ!
フェロモンにやられないよう、俺は意識をやられないよう気をつける。
そんな中、リョウはレオンの服を置き、レオンに近づいていった。
リョウ
リョウ
僕が満足するまで、ね?
ツキ
ツキ
あのヤロ・・・っ!
口よりも先に、体が動いていた。
俺は隠れるのをやめ、調理場へ足を踏み入れた。そして驚くレオンを気にも止めず、リョウの体をレオンから引き剥がした。
リョウ
リョウ
うわっ!?
リョウを近くの調理台に投げつけ、レオンの元へ駆け寄った。投げられたリョウは気を失って──眠っていた。
ツキ
ツキ
レオン、平気か?
レオン
レオン
あ、あぁ。平気、だ・・・うっ
頬を少し赤くしたレオンは、糸の切れたあやつり人形のように倒れた。俺はその体を受けとめた。
耳元で静かな寝息が聞こえ、俺はとりあえず着ていた上着を被せてやった。
ツキ
ツキ
やべぇな・・・。フェロモンきつい
俺は自分より小さな体を胸の前に抱え上げ、調理室を出た。
ドアを足で閉めると、丁度そこへソラが来た。
ツキ
ツキ
よっ。俺こいつ部屋連れてくから、先に食っててくれ
ソラ
ソラ
・・・は?いや、ちょっと待って!なんでレオちゃんは服着てないの!?それに、リョウちゃんは!?
ソラは質問の雨を、俺に大量に降らせてきた。まぁ答える間もなく、ずっと喋り続けたけど。
俺は話を右から左へ聞き流し、静かになるまで待った。
めんどくせぇ・・・。
ソラ
ソラ
レオちゃんは具合悪いの?もしかして、怪我とか!?そしたら早く手当しないと──
ツキ
ツキ
ソラっ!
ソラ
ソラ
・・・は、はい
ツキ
ツキ
説明は後だ
俺はそれだけ言ってからソラに背を向け、廊下を再び進んだ。
部屋の前に着くと、丁度よくレオンが目を覚ました。
レオン
レオン
俺は、何を・・・
ツキ
ツキ
リョウに襲われて、俺が助けたってとこだ
レオン
レオン
あ、ツキか。・・・え、ツキ!?
ツキ
ツキ
動くな!落ちんぞ!
意識がはっきりしていなかったようで、俺に抱えられてるのに気づかなかったようだ。半ば呆れながらも、俺はテキトーに状況説明をし、レオンを落ち着かせた。
レオン
レオン
そうか、助かった。・・・うっ
俺がレオンを下ろすと、いきなりあいつはドアの前にへたり込んだ。
息は少し荒く、見るからに不調っぽかった。俺もフェロモンにやられそうになり、気を強く保った。
その後レオンに駆け寄り、肩を掴んだ。
ツキ
ツキ
どうした?具合悪ぃのか?
レオン
レオン
ちが、う・・・。発情期っぽい
レオンは肩で呼吸していて、部屋に自力で入るのは無理そうだった。俺はレオンからキーを取り、部屋へレオンを運んだ。
正直、俺も結構しんどい・・・。今にも本能に支配されそうだった。
そんな気持ちを振り切り、レオンをベッドに下ろした。
ツキ
ツキ
抑制剤、ここ置いとくからな
少し離れた場所にあった瓶をレオンの横に置き、俺は部屋を出た。

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