若干イラついている俺を宥めるように、ソラは無理やり笑って言った。
リョウの奴が大量に食ったせいで、俺はほとんど食えてない。それはソラも同じだった。まぁ、コイツはずっと話したりしてただけだが。
すぐ威嚇すんのは俺の悪いとこだ。そこはいつも反省している。自分の行動に呆れながらも、俺は古の間を出た。
調理場の近くに行くと、2人の声が聞こえてきた。
俺は声を聞き、咄嗟に足を止めた。できるだけ見つからないように壁際に隠れ、ギリギリ見えるところからレオンを見た。
あいつはリョウに壁際に追い詰められているようで、とても怯えているように見えた。
さっきから、レオンから出されるΩのフェロモンが気になっていた。
普段は気にならない。というか、フェロモンは発情期にしか出さない。なら、あいつは今──
フェロモンにやられないよう、俺は意識をやられないよう気をつける。
そんな中、リョウはレオンの服を置き、レオンに近づいていった。
口よりも先に、体が動いていた。
俺は隠れるのをやめ、調理場へ足を踏み入れた。そして驚くレオンを気にも止めず、リョウの体をレオンから引き剥がした。
リョウを近くの調理台に投げつけ、レオンの元へ駆け寄った。投げられたリョウは気を失って──眠っていた。
頬を少し赤くしたレオンは、糸の切れたあやつり人形のように倒れた。俺はその体を受けとめた。
耳元で静かな寝息が聞こえ、俺はとりあえず着ていた上着を被せてやった。
俺は自分より小さな体を胸の前に抱え上げ、調理室を出た。
ドアを足で閉めると、丁度そこへソラが来た。
ソラは質問の雨を、俺に大量に降らせてきた。まぁ答える間もなく、ずっと喋り続けたけど。
俺は話を右から左へ聞き流し、静かになるまで待った。
めんどくせぇ・・・。
俺はそれだけ言ってからソラに背を向け、廊下を再び進んだ。
部屋の前に着くと、丁度よくレオンが目を覚ました。
意識がはっきりしていなかったようで、俺に抱えられてるのに気づかなかったようだ。半ば呆れながらも、俺はテキトーに状況説明をし、レオンを落ち着かせた。
俺がレオンを下ろすと、いきなりあいつはドアの前にへたり込んだ。
息は少し荒く、見るからに不調っぽかった。俺もフェロモンにやられそうになり、気を強く保った。
その後レオンに駆け寄り、肩を掴んだ。
レオンは肩で呼吸していて、部屋に自力で入るのは無理そうだった。俺はレオンからキーを取り、部屋へレオンを運んだ。
正直、俺も結構しんどい・・・。今にも本能に支配されそうだった。
そんな気持ちを振り切り、レオンをベッドに下ろした。
少し離れた場所にあった瓶をレオンの横に置き、俺は部屋を出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。