第2話

【誤魔化し】
38
2017/10/06 08:08
野山先生
お〜?おっそいな〜来るの。もう5時間目だぞ、蛍。
そういうと国語担当兼担任の野山先生は板書を消して、佐藤?を前へ誘導する。どうやら自己紹介をさせるみたいだ。
佐藤 蛍
数年前まではここに住んでいました、佐藤蛍です。趣味はゲーム?です。よろしくお願いします。
やっぱり、と私は佐藤…蛍を見た。あの甘くて優しくて暖かいあの匂いは蛍の家の匂い。蛍は確か小2の時に転校した。雰囲気はかなり変わったけど、あの目は変わってない。
野山先生
時期がおかしいけど、こいつ一応転校生だから。皆優しくしてやれよ〜……っとこんな時間か。起立!気を付け〜礼
ぽんぽんと蛍の頭を撫でると蛍を蛍の席に戻るように促す。時計を見ると45分、もう授業終わりか。ちらっと視線を時計から蛍へと移す。蛍…質問攻めだろうな。「私」のこと覚えてるかな。「あの約束」覚えてるかな。聞きたいことは山ほどあるけど…突然後ろを振り返るので、慌てて視線を逸らす。
クラスメイトA
佐藤だっけ、どこ小出身ー?
クラスメイトB
おい、抜け駆けずりぃぞ、さっきさ〜ゲーム好きとかいってたろ、なんのゲーム?
案の定、蛍は質問攻めに合っていた。席の周りには女子や男子やら。いつもは私の席に集まる子も今は、蛍の席へ行っている。
よくよく見てみると蛍の隣の席の大人しい…えっと、吉川(よしかわ)さん?だったかな。座れずに困っていた。おどおどと自分の席の周りを行き来している。避けてとかいわないのかな。
佐藤 蛍
そこ、どけてあげて
男子や女子の声を蛍の声が制する。温かくて耳あたりのいい気持ちいい声。皆は「あっごめぇーん!」とか「そこいたの?気づかなかった」と口々に言いながら吉川さんの席を開ける。
吉川さん
あっ…ありがとう。
照れたように言うと。スカートを手で抑えながら女の子らしく座る。蛍は吉川さんのことを気遣ったのか、場所を移動する。それにつられるようにして、皆を移動した。
白葉
いっちゃった。
三日月
佐藤くんのことー?
蛍を目線で見送った後、顔を伏せていた。上から三日月の質問が聞こえた。声に出てたんだ。顔色を一切変えずに「適当」な言い訳をする。
白葉
うん、佐藤くんのこと。
「適当」といっても、いい加減の方じゃない。『三日月がほしい答え』だ。辞書でいうところのあてはまる方。三日月が言ってほしそうなことを言う。

私は昔から人の顔色を伺うことが得意だった。その人がしてほしいこと、言ってほしいこと、だいたい言えば自分の思うようになってきた。今、三日月が欲しいのは「正直な答え」。嘘を付けば、暫く口は聞いてもらえないだろう。
三日月
そっかぁ、さとーくんかっこいいね
まるで、三日月は私のことを挑発するように聞いてくる。そう言えば、私がうっかり口をこぼすとおもっているのかな。
白葉
そうだね〜お餅みたいで…
私がふざけた答えをいうと、三日月に殴られた。もう少し手加減して欲しいなあ、なんて言いながら私達は移動教室へと向かった。

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