ーーーー気づいたときにはもう、シャッターを切っていた。
「……絶対嫌」
「そこをなんとか、ね?」
目の前で可愛らしくお願いしてくる彩羽。
私達双子の姉妹はよく似てると言われるけれど、どこが似ているのか私には理解できない。
「みう~…」
うるうると捨てられた子犬のような瞳で見つめられるが、私はそこまで甘くはない。
「はい、決定~!今日の放課後よろしくね!!」
それでもいつも強制的に付き合うことになる。
「……なんで私が…」
私と対照的な彩羽はにっこにこ。
「ため息ばっかついてると、幸せ逃げるよっ
あ!ほらほらあそこ!」
彩羽の“気になるかっこいい男の子”と聞いていた私は、開いた口がふさがらない状態になってしまった。
確かにかっこいい、
というより綺麗な顔立ちをしている。
ただ……
「…………プリン頭……」
「オシャレだよね~!!」
オ、オシャレ……?
「ということで、よろしくね~!」
彩羽に言われ、カメラ越しにプリン頭の彼を捉える
ーーーーと
一瞬だけ、目があった気がして
「……きれい……」
気づいたときにはもう、フォームが綺麗な“黒髪の彼”に、シャッターを切っていた。
「撮れた!?……て、私言ったの黒尾先輩じゃないよ……!?」
「…あ。ごめん」
「もしかして無意識? へぇ~!」
そのにやけ顔ヤメテクレナイカナ。
「話しかけてこよ~よ!」
ぐいぐいと強引に引っ張られれば、目の前にはプリン頭の彼……ではなく、黒髪の彼。
プリン頭の彼はその隣にいた
「……練習観に来たいとは聞いてたけど、まさか今日だとは思わなかった。」
「ふふ、びっくりしたでしょ」
何やら親しそうに話すふたり。
……まだ入学して間もないけど面識あるの?
「きみが鈴谷のお姉さん?はじめまして
名前は?」
「……チャラ…」
黒髪の彼は先程とは違い、軽そうに見える。
なんていうか……言い方が嫌だ。
「みうで~す! 美しい雨で美雨!」
なんで勝手に応えちゃうの彩羽………!
「美雨」
「覚えた」
いきなり呼び捨てですか……!
ていうか覚えなくて大丈夫です……!
これが私と、黒尾先輩との出会いーーーー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。