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第1話

ほろ苦い過去
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2017/10/06 11:59
俺の名前は杉乃井拓磨(すぎのいたくま)。
俺は幼い頃、青森県の山奥の田舎で育った。
田舎だったこともあって、地域の人は進学や結婚と同時に出ていってしまい、過疎化していた。そのため、幼稚園も小学校も生徒は少なく遊びも限られたものしか出来なかった。

しかし俺が8歳になった頃、青森県から神奈川県へと引っ越すことになった。これは、親から聞いた話なのだが、その頃俺には好きな子がいたらしい。
そのため引っ越しの際にはかなり駄々をこね、神奈川へ連れて行くのに相当手間取ったそうだ。
その頃のことは、正直あまり覚えていない。けれど、その時好きだった子が恐らく近所に住んでいた来宮久遠(きのみやくおん)という女の子だったことは、ほぼ間違いないと思う。

神奈川県に越してきて一時は、怒って口も聞かなかったらしいが、段々地域の子どもたちの輪に馴染み始めてからは、青森へ戻りたいと言うことも減っていったそうだ。
そうして月日が経つにつれて、恐らく幼馴染の久遠に対する想いも薄れていったのだろう。
俺は中学に入ってすぐ彼女が出来た。
初めての彼女だ。
中学に入ってすぐ、俺はバスケ部に入部した。
その時一緒にマネージャーとして入部してきた子が、後に俺の初めての彼女になった。
けれど中学2年生になってすぐ、俺は青森へとまた戻ることになってしまった。しかしその時にはもう俺の彼女はバスケ部の部長と親密な関係を築いていたようで、俺が引っ越すことを話した際にはあっさりと別れを告げられた。
俺も俺で、何となくそうなることを察していたのか、すんなりと受け入れることができた。
だがその態度が気に食わなかったのか、すぐに俺の浮気が原因で別れたという噂が流れ始めた。

こうして、引っ越す時には友人と呼べる人間はほぼ居らず、俺は半ば逃げるかのように神奈川県から出ていった。

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