第4話

今もなお
24
2017/10/07 11:47
あいつの、何気ない言葉に心を動かされてから二ヶ月

残念な事に今でも私はあいつに恋心を抱いている。

それで結ばれていれば結果オーライかもしれないが、私は今もあの時のようにあいつの横顔をただ見つめることしか出来ていない。

二限終わりまで、あと三分。

ああやって私と同じように授業中に外を眺めるあいつも、きっといつか恋心を抱くわけで、もしかしたら今も恋焦がれている相手がいる訳で、それは分かっているんだけど、

この高揚してしまった気持ちを携えたままでいるのは、何だかもどかしくて、変な感じがする。

今まで鬱陶しかった「幼馴染」という肩書きに、私があいつに恋心を抱いてしまったとたんそれに縋り付くなんて、情けないにも程があるが、それに縋りつかないと、「もしも」の可能性も見いだせなさそうで、怖くて、
「ありえない」なんて思いながらも心の片隅で願ってしまう。

話しかける機会を伺っても、昔はさておき今はもう接点がほとんどなくなってしまった私には話しかけるきっかけなど無く、恋に落ちて二ヶ月、変わらずあいつと私の関係の変化は全くない。


チャイムが鳴る。
生徒達が話し出し、騒がしくなる教室。

あいつはまだ、窓の外を見ていた。

「…【私】ってさ」

「え?」

話しかけてきたのは斜め後ろに座る学級委員、一時期私が恋していた人、細身で背が高く、黒縁メガネが良く似合う、そこそこなイケメン…だとクラスの女子は言っている。

どうしてこの学級委員に恋していたのか、今ではよく分からないけど、とにかく恋心は直ぐに冷めたことは覚えている。

「【私】って、なんでいっつも外みてんの?」

「空が、好きだから…かな?…なんで?」

「いや、授業暇なら皆みたいに隠れてスマホでも弄ればいいのにって思って」

「確かに、なんでだろうね、というか【元好きな人】、学級委員の癖にみんながスマホしてんのほっといていいの?」

「現代文の授業を寝ずに乗り切るには、そうせざる負えないやつばっかりだろ、うちのクラス」

「まぁ、確かにね。」

【元好きな人】は少し笑って、小さく息を吸うとやけに真剣な眼差しで私の目を見た。

私はなんだか見ているのが怖くて、咄嗟に下を向く。

「なぁ、【私】、今日、放課後ちょっと時間くれない?」

いいよ、と私は答える
あいつは、いつの間にか机に突っ伏して眠っていた。

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