第2話

Story.1
58
2017/10/08 07:49
うっすらとした微睡みの中、目覚まし時計の音が聞こえる。夢現も、その居場所に手を伸ばした。

カチッという音と共に鳴り止むそれを、ぼーっと見つめ、現在の時刻確認をする。7時ぴったりを示した針が目に入り、そっと元の場所に戻した。



6月下旬。梅雨の時期には珍しく、太陽がカーテン越しに部屋を照らす朝。その明かりが意識を少しずつ覚醒させていき、眩しさに思わず目を細めた。

重だるい体を何とか起こしてリビングまでの階段を下る。人の気配がないそこには、ラップのかかったお皿だけがポツンと置かれていた。


『温めて食べてね』


そんなメモ書きを添えて。見た目だけでは何とも質素だけれど、母の忙しさをよく知っているから文句なんてない。むしろ、わざわざ作っていってくれて有難いくらい。

恐らくしばらく経っているだろう。冷えきったご飯と味噌汁を電子レンジへ入れた。


それらを食べ終わると、着替えに再び自分の部屋へ。
先程忘れていたカーテンを開けると、窓から覗く人影が一つ。



朝は結構好きだったりする。明るい空は何度見ても気分が良くなるし、一日の始まりって感じがする。

それに。


「おはよう……っ、春くん」


「あ、おはよう」


大好きな人に会えるから。

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