※懐かしのプリ小説β版での作品を改良しまくった!
※じんたん目線(多い)
※季節外れ
※密かな幸せをそっと感じてくれたら嬉しいです…
-
何の変哲もない7月の月曜日。
突然の提案に少し戸惑った、
午後1時46分頃。
-
テオくんが、遠くの方に行きたいって、
電車に揺られること、何時間。
もうどこに向かっているのかも分からない。
ただ、無口で、静かな時間が流れていくだけ。
電車がゴトン、という音をあげて揺れた。
窓から見えるのは、
遥か遠くまで広がる青い、青い海。
日に照らされて、キラキラと……
なんて、
ロマンチックな光景が見えたわけではない。
今日は少し曇ってて、
でも、
蒸し暑い日。
電車が駅に、静かに着いた。
-
海の近くにあるだろうと思って
歩き回ってみたところ、迷ってしまった。
汗が額から垂れるのが気持ち悪い。
少し田舎のところに来てしまったらしく、
どこを見渡しても、高い建物は無かった。
そう言って手を握ってくれる。
俺は横をちらっと見て、テオくんの横顔を見た。
テオくんは前を向いたままだけど、
今、どんなことを考えてるの?
水族館のこと?
この街のこと?
今日の晩御飯のこと?
それとも、
俺のことかな?
-
俺たちは、スマホで現在地をなんとか調べて、
安いホテルに泊まることにした。
テオくん、今日はとっても静かだな。
朝からなにか考えてるみたい。
少しの間が空いた。
テオくんが、窓の外に目を向ける。
安い割には、窓から綺麗に海が見えるとこで、
夕焼けが綺麗に見えるとこで、
テオくんが、窓に目線を向けたまま
ぼそり、と呟いた。
幸せ。
なぜか、やけに懐かしく感じる言葉。
テオくんはそれだけ言って、口を閉じた。
ただ、遠くを見つめる姿がどこか切なくて、
俺は
テオくんがどこか遠くへ行ってしまう気がして
寂しい思いでいっぱいになった。
俺が心を込めて言った言葉は
波の音で掻き消された。
テオくんに、ちゃんと伝わったかな?
-
テオくんが、今日初めて俺の方を向いて
優しく微笑んだ。
夕日が顔に当たって、
やんわりとオレンジ色に染めている。
じゃあ、今俺の顔が赤いの、
テオくんにバレてないよね。
久しぶりに、ドキッとした。
俺たちはもう、
恋人みたいに手を繋ぐ関係だし
キスをしあったり
一緒に寝る関係でもあるけど
なんか、
好きって感情が止まらなくなって、
今すぐ抱きしめたくなったのは、、
とても久しぶりで。
ほっぺにキスしたら、
今度はテオくんが口にキスしてきた。
-
こんなに静かな時間を過ごしたのは、
いつぶりだろうか。
波の音に抱かれながら、
ベッドに横たわって、
寝息を立ててる君を見ると、
幸せって、
こうゆう意味だったな、って。
END.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!