家に帰る。
ドアを開ける。
可愛い妹だ。
無邪気で純粋で真っ直ぐで。
ほんとに、澄んだ目をしてる。
いいな。
ふと、そう思った。
あたしは今、どんな目をしてるんだろ。
暗い目?
濁った目?
光のない目?
……死んだ目?
あの日。ユリナの余命宣告を受けた日から、私の目はきっと死んでいる。
もちろん、皆や家族の前では明るく振る舞っているけど
でも、やっぱり限界がある。
……あたし、なに考えてんだろ。
ユリナの方が辛いに決まってんじゃんっ……
私達が強くならないと、誰がユリナを励ますんだよ……
あたしは、自分の部屋に入ると鍵を閉め、布団に潜り込んだ。
やっべ、涙が溢れだしてきた。
もう、ほんとなにしてんだろ……。
なに、やってんだろ……。
皆、どんな気持ちで夜を過ごしてんだろな。
ははっ。
きっと、皆も同じこと考えて落ち込んでるんだろーな。
集まったときは笑顔なのに、解散したら皆して暗い顔して。バカじゃん。
なんとかしないとね。
なんてたって、リーダー、なんだから。
私は涙を拭うと布団から這い出して、ベランダに出た。
そして、大きく息を吸い、
ありったけの声で叫んだ。
ド田舎なんだから、誰にも迷惑かけないしね。
もう泣くのは終わり。
くよくよすんのも終わり。
前に進むだけ。
よっしゃ、やってやろうじゃん。
神様のばーか。
うちらに出来ないことなんてないっての。
見てろ。
湊太からだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!