第13話

観覧車の3秒
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2018/07/29 03:29
もはや3秒ルール守ってません(ネタバレ)

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藤枝
変な目で見られた
寺島
男同士で乗る人が少ないんじゃない?




観覧車はどんどん上へと回っていく。

話すことがなくて、ただただ沈黙が続いた。


寺島が口を開く。


寺島
藤枝、ここならキスしていいでしょ?
藤枝
観覧車でキス、ねぇ…
藤枝
……いいよ
寺島
じゃあそっち行く


寺島が立ち上がってこっち側に座った。

微妙に傾く。


狭い空間にこの状態は

誰でもドキドキするよ…な?

藤枝
今度こそは授業しっかり受けてよね
寺島
げ、まだその条件付いてるの?
藤枝
守らないならしない
寺島
守る


寺島が俺の方を向いてきた。

いつものように真剣な顔。


目をつぶって待ってみる。

吐息が顔にかかって、少しくすぐったい。



…ストップウォッチのボタンを押す。

もう癖となっていたその動作を
今まで忘れていたかのようだった。



1


2


3







寺島の唇は離れなかった。


むしろ、3秒ルールなんて関係ないかのように

どんどん角度を変えて

そして、どんどん深く…

藤枝
んっ、
寺島
ん、ごめん
藤枝
…授業ちゃんと受けてもらうから
寺島
わかったわかった


そう言った寺島はなんだか気軽そうに見えた。


こんな俺とキスしたのに
なにも感じないのかな。

こいつ。



不意に寺島がこっちを向いて

ふにゃっと笑った。


なんだよ、その笑い方。



気づけばもう観覧車が1周回っていたようだ。

観覧車から降りると、また変な目で見られた。



あー、



多分、俺の顔が赤かったからだろうな。


-


寺島
また来ような
藤枝
うん


そう言って寺島の背中に手を降るも


まだ胸の奥に突っかかっているものは

無くならなくて。


不甲斐ない気持ちでいっぱいになって。



俺は寺島と反対方向を歩き出した。












誰かとずっと一緒に居たいという気持ちは
きっと初めてで……

少し歯がゆい感じがした。

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