第6話

屋上の***秒
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2018/05/19 09:14
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寺島
おはよぅ!!!
藤枝
あ、おはよう…
寺島
なんだよ藤枝、
元気ないなー!











なんでこんなに明るいのだろうか。


昨日、俺にキスしておきながら
なんで気安く話しかけられるんだ。


俺だったら絶対無理だ。


ということは、寺島だから出来たのか。


寺島はいろんな人に
「おはよう」と声をかけてまわっていた。


なんだか眩しいなぁ………

今日は曇りなのに。
寺島
あ、藤枝
寺島
あとで屋上来て
藤枝
お、屋上!?


屋上は立ち入り禁止で鍵がかかっている。

どうやって行くんだよ…


それに、すぐHRが始まってしまう。

寺島
あ〜もういいや!
行くぞ!!
藤枝
え、ちょ、ちょっと待ってよ!



寺島は俺の手を取って
全速力で走った。


俺は野球部だったくせに
体力が衰えてしまったのか、
ただの運動不足なのか、

足が全然追いつかない。


あ、こいつサッカー部だったっけ。


なんて考えていたら、
もう屋上へと続く階段を上がりきっていた。

寺島
見てて、


寺島はどこで拾ったのか、
針金を鍵穴に差し込んで上下左右に動かした。

手つきが慣れている、
こいつ、よく屋上に来てるのか。


ガチャリと音がしたと思えば
寺島がドアノブを捻って重そうなドアを開けた。

…屋上ってこんなに広いんだ。


別に感動はしなかったけれど、
風がとても涼しくて気持ちいい。

晴れの時は、もっと気持ち良さそうだ。


寺島が大の字になって横たわっているから

俺も真似して空を仰いでみた。


曇りなのが少し残念だ。

寺島
藤枝
藤枝
なに?
寺島
昨日のこと、怒ってる?
藤枝
なんで?
寺島
気持ち悪かっただろ
男にキスされるなんて


寺島はさっきとは裏腹に
とても真剣で、少し緊張した。

寺島ってこんなキャラだったっけ。

藤枝
……別に
寺島
ほんと?


寺島が起き上がって俺の顔を見た。

相当びっくりしてるな。

藤枝
ファーストキスだったけどね
寺島
っ…ごめん……


寺島は顔を赤くして、少し俯いて言った。


まぁ、ファーストキスが男なのは少しキツい。

だけど、
寺島だからいいや
なんて思ってしまうのは、多分友達だから。


友達。


そう、俺らは友達だ。

藤枝
3秒ルール、守れなかったね
寺島
えっ、嘘!?
藤枝
3.01秒だったよ
寺島
やば!!!
守れなかったの初めて!
寺島
でも、


寺島はまた横になった。

いつの間にか、雲の間から太陽が覗いていた。













寺島
多分、藤枝ともっと長い時間キスしたかったからだと思う


少しびっくりした。


隣を見ると、寺島は顔を背けていた。


…耳まで真っ赤だよ、耳も隠せよ。

藤枝
じゃあいいよ、しても
寺島
え?

俺は起き上がって
寺島の顔を両手で挟んだ。

そして



寺島の唇に…自分の唇を重ねる。


少し薄い唇は、昨日の感覚と同じ。


軽く口付けたつもりなのに、

時間は長く、甘く続いていく。


今日は、3秒ルールなんて関係ない。

何秒経ったのかも分からない。


不意に唇を離すと、寺島はやっぱり真っ赤で。


寺島
…ありがと
藤枝
ううん

顔が熱い。


多分、俺も真っ赤なんだろうな。






















__もう少し、ここで涼んでいこう。

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