第11話

人混みの中の3秒
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2018/07/16 00:54
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ふと、目が覚める。


ベッドから降りて、
ぐっと背伸びしてみる。


久しぶりの清々しい朝。


カーテンの隙間から差し込む光が
なんだか神秘的だ。


階段を降りてダイニングへ行くと
テーブルに昨日と同じようにメモが置いてあった。


『朝ごはんは自分で買ってね』

と書いてある。

コンビニにでも行くか。


俺は服装の準備をするために
階段を上がって部屋のドアを開けた。


…なにかを忘れているような気がした。


なんだっけ、大事な用事だったはず…。


俺は机の上で充電していたスマホをとって、
画面を見た。





あ、10時半から寺島と遊ぶんだ。


時計に目をやる。

10時15分。


俺の家からバス停まで約3分。

そう、バス停までは近い。


そこからバスに揺られること…

10分。


今から
着替えて
準備して
朝ごはんを買うとなったら、

もう、

間に合わない。

藤枝
……やばい


俺はとっさにLINEを開いた。


寺島に

『寝坊したから遅れる』

『ごめん』

とだけ送った。


急いで支度をする。

-

藤枝
(どこにいるんだよ…)


急いで来たものの、
人混みが出来ていて全く見えない。


背伸びをしても押されて転びそうになった。


確かにここは休日になると
めちゃくちゃ混むから控えてたんだっけ?


LINEは既読がついていて
スタンプを送ってくれたけど

寺島がどこにいるのかは教えてくれなかった。


なんだか泣きたくなってきた。


藤枝
(探さなきゃ)


そう思い、歩き始めた3秒後。

不意に誰かに腕を引かれた。


藤枝
わっ、、


そのまま腕を引かれて

人混みの中を走っていった。


何分か走ったあと、
少し開けた場所に来た。

俺の腕を引っ張っていた人が振り返る。




あ、寺島。


寺島
ごめん、
結構強く引っ張っちゃったかな?
藤枝
いや、大丈夫
よく俺のこと見つけられたね
寺島
だって藤枝だもん
わかるよ
藤枝
そう、
寺島
じゃあ行こ


そう言って、
今度は手を引かれた。

なんで繋ぐんだよ。


…恥ずかしいじゃん、男同士とか……。


なぜか繋いでいる手に汗をかく。


前で俺の手を引いている寺島の服装を見る。

大人っぽくて帽子が似合っている。
ピアスがいいアクセントだ。


寺島の背中は、
なんとなくたくましくて、広くて、




___かっこいい気がした。

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