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外に出てみたら、
空はもうオレンジ色だった。
あの時と同じで、寺島のピアスが光る……
なんてロマンチックな光景ではなかった。
空はまた曇りになっている。
日が暮れるまで歌ってたら
さすがに喉が潰れるだろ。
帰りも飛ばしていこう
なんて寺島が言って自転車に乗ろうとしたら、
タイヤがパンクしていた。
運悪いなー。
寺島と俺で並んで学校まで帰る。
寺島はなぜか黙っている。
いつもはべらべらと喋っているくせに。
寺島が少し恥ずかしそうに顔を背けた。
また耳まで赤くなってる…。
今度は駄々をこね始めた。
めんどくさい……
でもなんか憎めないんだよなー。
寺島が俺の顔を見つめてくる。
俺の顔になんか付いてんのかな
ってぐらい見てくる。
……なんだよ。
こうゆうのってなんだか、
ドラマみたいな…少女漫画みたいな…
変な気持ちだ………。
寺島が頬に手を這わせてくる。
少しくすぐったい。
寺島の整った顔が近づいてきた。
ここが外だということを忘れているかのように
寺島が目を閉じて
俺を焦らすかのようにゆっくりと唇を近づける。
…なんで俺、ドキドキしてんだろ。
3秒間の口付け。
少し唇がカサカサしていて、
逆に生々しかった。
まだ唇に感覚が残っている。
ふわふわして、
でも、
ドキドキしていて…
実は俺も短いと思った。
なんて言ったら、
さすがに気持ち悪いかな。
その後俺たちは
なんだか気まずくなって、黙っていた。
でも、
まだ学校に着いて欲しくないな
なんて思ってしまったのは
__多分気のせい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!