夏のある日のあと、俺の仕事は忙しくてどうしてもあなたの所へ行けなかった。
そして、秋。ようやくあなたに会える。そう思って病室に行くと洋服を着て車椅子に座っているあなたがいた。
俺とあなたは病院を出てまず、レコーディングスタジオへ行った。
俺は椅子に座る。横の椅子には龍友くんが座っている。
俺と龍友くんは『空』を歌った。
この曲は俺の主演映画の曲で、絶賛されている曲。
俺はいつもこの曲をあなたを想って歌っている。
だから、あなたに聞いて欲しかったんだ。
歌い終わるとあなたの拍手が小さく、響いていた。
レコーディングスタジオで龍友くんとはお別れして俺達はある、丘の上に行った。
その丘は俺が好きだった丘。
丘の上にはベンチと桜の木が植えてある。
丘は、俺とあなたの初デートの場所だった。
本当は町を歩いていたが、俺が歩いているという噂が流れてしまい、人気の無いところに、と進んでいくウチにこの丘を見つけたんだ。
振り返ったあなたの笑顔はすごい、綺麗で。
あなたの目線の先には可愛らしい花が咲いていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。