息をきらしながら、カンタの前に戻った。
カンタは静かに言った
これまでの私の生活は、大変だろうと思っていたこと。
電気代とか水道代とか、1人で賄っていくのはこの先大変だろうとおもっていたこと。
このほかにもたくさんのことをはなしてくれた。
唐突に、こない?といわれても、うん!とは、すぐには言えなかった。
今は亡き、母親。
見たこともなくいなくなってしまったような存在の母親役。
それに、航空機での不慮の事故によって亡くなってしまった父親。
そんな家族のことを思うと、私は胸が苦しくなった。
止まらなくなる涙。
今まで溜まっていたものが、すべて溶かされるように。
ずっとカンタは隣にいる。
「寂しくなんかない」
そんなの嘘。
だから…
私は………………
家族も、この家も大事だけど……
一番大切なのは……
いつも心配してくれる、
カンタくんなのかな…
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!