その手との出会いは、わたしの親友芹のおかげだと言っていいだろう。
芹はその日、わたしに新しくできた彼氏を紹介した。
わたしは作り笑いを浮かべ、頷いた。
結構いい感じの人だなぁと、わたしは思った。その瞬間、わたしは彼の手に見惚れていた。
(なんて綺麗な手なんだろう。あの手で触れられたい。手に入れたい!)
私の心は、今まで以上に高鳴っていた。
(これは近くチャンス!)
芹がトイレから帰って来たので、2人は喋るのをやめた。私は、もっと宗くんの手が欲しいと思った。
その時!!
芹が宗の手に自分の手を絡めた。
私の胸が誰かから鷲掴みにされたように痛かった。
(それは、私の手なのに、触るな!!!)
私の心は怒りと嫉妬で満ちていた。息ができなくなる。苦しい、苦しい…
宗の手が、私に触れた。
一気に力が戻ったみたいだった。息も楽になり、心もスッキリと晴れわたった。
私2人と別れて、どうやってあの手を手に入れるか、頭をフル回転させて家路に着いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!