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第4話

3話 ギリと本命と告白
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2018/01/31 03:17
今日はやっとバレンタインチョコを渡せられる日。周りは一足早いホワイトデーを迎えている者が多いけどね

希とにこちゃんを除くメンバーに渡して、今はにこちゃんに渡していくところよ
そう、あの本命チョコを渡した本人……
西木野真姫
西木野真姫
あ……
路地の曲がり角を曲がると、その人がいた
これこそ偶然という言葉がよく似合うわね


矢澤にこ
矢澤にこ
真姫ちゃん?  お久しぶりじゃない
西木野真姫
西木野真姫
お久しぶりって……昨日会ったじゃない
矢澤にこ
矢澤にこ
でも希のことばっかりで話しかけてもくれなかったじゃん。ならお久しぶり、でもいいんじゃない?
西木野真姫
西木野真姫
そういうものかしら……

そういえば、昨日はにこちゃんについてあまり触れていなかったわね。わざと触れなかったんだけどね
矢澤にこ
矢澤にこ
うん?  後ろに何か隠してるの?
西木野真姫
西木野真姫
ああっ、ちょ、ちょっと!
矢澤にこ
矢澤にこ
チョコ……?  ホワイトデーにしては早いわね。貰うわねー
西木野真姫
西木野真姫
え、あ……本命なんかじゃ……

私のバレンタインチョコに対する反応が薄いことに少し動揺してしまったわ
かなり飛び上がるかと思ったんだけど
矢澤にこ
矢澤にこ
分かってるよー、そのくらい
西木野真姫
西木野真姫
で、でもそれなりに愛情は入ってるから……!
矢澤にこ
矢澤にこ
そっか……ありがとね

にこちゃんは……なんだかあの頃と何かが変わった。みんなが本当に幸せになれる自分のキャラに変えてみたっていうのは知ってるけど、何を変えたのかさっぱり分からない。でも変わっているのは丸分かりなのよね
身体? 気にしないであげて
矢澤にこ
矢澤にこ
嬉しいっ!
西木野真姫
西木野真姫
うぐっ!  いきなり抱きつかないでっ!
矢澤にこ
矢澤にこ
でも嫌われたのかなって思ったから……

にこちゃんの抱きつく力が弱まり自信なさげに俯いた
西木野真姫
西木野真姫
いや、その、そういうつもりなんかで言ってないから!  そんな落ち込まなくてもいいわよ?
矢澤にこ
矢澤にこ
そう。ならこのまま、抱きついてていい?
西木野真姫
西木野真姫
それはイヤよ
矢澤にこ
矢澤にこ
えぇっ?  そんなこと言わないでよ〜
西木野真姫
西木野真姫
ちょっと!  また強くなって……離しなさいよ!

にこちゃんの手を離そうとしてもしぶとくて離そうとしない。苦しい……
矢澤にこ
矢澤にこ
離したら希のところに行くんでしょ?  なら離さないにこっ!
西木野真姫
西木野真姫
今の私はにこちゃんなんかに構っていられないの!  だから離して!
矢澤にこ
矢澤にこ
離したら、にこ、悲しくなるよ〜
西木野真姫
西木野真姫
本当にお願いだから……!

肩にかかっている腕を掴んで振りほどく。その手ごたえはとても緩かった
矢澤にこ
矢澤にこ
……ふう。分かった。要にはまだ真姫ちゃんは希のことが大好きなのね
西木野真姫
西木野真姫
……うん
矢澤にこ
矢澤にこ
ならば頑張ってそれを奪うのみよ!  待っててなさいよね!
西木野真姫
西木野真姫
元々待ってなんかいないけど、まあ、期待はしておくわ

渡すものは渡したわ。早く希のところに行きましょう

動く足はだんだんと速くなっていった


西木野真姫
西木野真姫
えっと……その……こ、これ
東條希
東條希
んー?  ホワイトデーチョコ?  あれ、でもウチ真姫ちゃんにバレンタインチョコ渡したっけ?

希は家にいたわ。今でも希は一人暮らしだ。
玄関先で差し出したチョコをまじまじと見つめつつ、私の方を見る
西木野真姫
西木野真姫
バレンタイン、チョコよ……その、受験勉強で渡せなかったから……
東條希
東條希
なるほどね。ありがとうね、真姫ちゃん

いつものように私は顔に熱を帯びて口を引きつらせる。これは好きになるためのお約束なのよ
西木野真姫
西木野真姫
えっと……私、希のこと……好きなのっ!!
東條希
東條希
……そっか。なら、付き合っちゃう?
西木野真姫
西木野真姫
え……

希がその言葉を出すのは意外……ではなかったのかもしれない。
メンバーの中でもノリがいい方だ。このくらいなんとでも言えるだろう。

でも、その目はなんだか本気で言っているようにも見えた。

胸の鼓動が速くなっているのが分かった。とても強かったわ。
東條希
東條希
あれー?  反応薄いな〜?  倒れるかと思ったけど
西木野真姫
西木野真姫
私はそんなに弱くないわよ!
東條希
東條希
で、どうなん?
西木野真姫
西木野真姫
え、えっと……お、お願いします
東條希
東條希
よし!  なら明日はデートや!
西木野真姫
西木野真姫
え、いきなり!?  い、いきなりデートするの!?
東條希
東條希
行くやろ?

希はずいっと私に顔を近づけた

や、やめて……!!

ずっと好きだった人にこんなことされると、あまりのドキドキに足が震えて倒れそうになるじゃない
西木野真姫
西木野真姫
う、うん……



好きな人の押しに断ることもできず、私と希は付き合うことになったのよ

3月になったのにまだ寒い。私はたまに目に入る、人の羨む視線と希の笑顔の明るさを感じて、寒くも暖かくもない空気でちょっとあまり気にならなかったわ






終わりです。書き溜め尽きました。

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