第5話

呼び方。
81
2017/10/09 02:19
情報の授業では、移動教室をしなければならない。
その時席は出席番号順。
その順番で座ると、私と馬渕くんはとなりになる。
授業が始まって、パソコンを使って、それぞれ作業を始める。
馬渕 樹
鵜浅さん!昨日は宿題、ありがと!
急に馬渕くんに話し掛けられた。
ちょっとだけ、どきっとした。
鵜浅 颯夜架
ううん!大丈夫!
私が笑って返すと、馬渕くんも笑ってくれた。
こういうことがあるから、学校は楽しいと思ってしまう。
遠くから麻生ちゃんの視線を感じた。
でも、この時は無視した。
ちょっとくらい、話す権利は私にもある。
鵜浅 颯夜架
あっそうだ!呼び方、「さん」付けせんでいいよ!
「鵜浅さん」だと他人行儀だし、さん付けはなんかむず痒い。
普通に鵜浅とかで呼んでほしい。
馬渕 樹
じゃあ、なんて呼べばいい?
鵜浅 颯夜架
ご自由にどうぞ。
私がそういうと少しだけ悩んだみたいだ。
馬渕 樹
颯夜架
私の心臓がなった。
まさか、下の名前で呼ばれるなんて。
驚いた顔で馬渕くんをみつめていた。
馬渕 樹
え、だめ?
鵜浅 颯夜架
いや、そのダメではないけど。
あの、無難に鵜浅でいいよ。
私は焦りながら言った。
たぶん、このまま颯夜架って呼ばれ続けたら、心臓が破裂する。
本当は呼んでほしいって気持ちもあるけど、それどころではなかった。
その日は終始ハッピーだった。
だけど、やっぱり麻生ちゃんはよく思っていないみたいだ。

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