第9話

クラスマッチ。
67
2017/10/09 12:55
席替えの次の日はクラスマッチだった。
競技はバレー。
前半男子、後半女子、各10分ずつのタイムマッチ。
私たちのクラスは男子がいつもリードしてくれるけど、女子で逆転され続けていた。
ある男子からは、せっかく俺ら勝ってるのに、とまで言われてしまう始末。
私達は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして、私は辛さを最高潮に向かえていた。
周りの応援ムード、それが私をさらに追い詰めていた。
誰一人私の辛さになんて、気づいていなかった。

私と実莉ちゃんは教室に戻り昼食をとることにした。
午前中の試合を振り返って午後を迎えようとしていた。
実莉ちゃんは馬渕くんの席に座って私と向かい合って食べた。
湖東 実莉
午後、勝てるかな?
鵜浅 颯夜架
わからん、でも頑張るしかないやん。
ふたりとも、気持ちは暗かった。
ガラガラ。
扉の開く音と共に同じグループの友達と馬渕くんたちが入ってきた。
湖東 実莉
ごめん!借りてる!
馬渕 樹
あぁ、大丈夫!
麻生ちゃんは馬渕くんの席に座る実莉ちゃんを睨んでいた。
そこまでしなくてもって思ってしまう。
教室へ戻ったみんなはスマホを取り出した。
学校では使用禁止だがバレなければOKだ。
みんな、思い思いの曲をながし、写真を取り出す。
友達と学校で写真が撮れるのはこんな時だけだ。
私と実莉ちゃんも昼食を、取り終えるとスマホをいじり出した。

私はイヤフォンを付けて好きな音楽を聴く。
つらいからこそ、音楽を聞いた。
たぶん、今の顔は真っ暗だろう。
あ、このあとの予定確認しなきゃ。
試合に遅れたりしたら起こられちゃう。
日程表は黒板に掲示されている。
教卓でご飯を食べる馬渕くんたちに、ごめん、と言って日程表を見た。
えっと、試合まであと20分か。大丈夫だ。
もう少しやすもう。
馬渕 樹
鵜浅、頑張ろう!
馬渕くんは唐突にそんなことを言った。
鵜浅 颯夜架
頑張れないよ…
私は小さな声で答えた。
でも、すごく嬉しかった。
なんだから、私の辛さに気づいてくれてる気がした。

それに対して女子が、いつもリードしてくれてるのにって感謝の気持ちを伝えた。
すると馬渕くんはこう言った、
馬渕 樹
リードって言っても、1点、2点やん。
もうちょっとリードできんでごめんね。
笑いながら言っていた。
あれだけ動いてリードしてくれてるのに、それなのにごめんって…。
ずるいなぁ。
なんでわたし、頑張れない、なんて言ったんだろう。
すごく後悔した。
午後、もっと頑張ろう。
そう私は心底思った。

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