数学の補習が始まった。
辛いけど、みんなで教え合うため、席は移動してよい。
それぞれ、難問に立ち向かっていくのだ。
今の私は完全に馬渕くんの専属。
馬渕くんの後ろの席で淡々と、補習をし、質問に応えている。
でも、私にも分からない問題はある。
1組~3組までが補習が行われている。
数学の先生は1組~3組までを巡回していて、私たちが聞けば教えてくれる。
でも、いつでもいる訳では無いから、来るのを待つか、呼びに行くしかない。
私じゃない人ならわかるかもしれない。
そう思って周りを見渡した。
あれ?
私の周りには仲いい人が誰一人としていなかった。
全員、麻生ちゃんの方へ集まっていたのだ。
たまたま、先生が通りかかったから、教えて貰った。
馬渕くんも一緒に。
私も馬渕くんもしっかり理解出来た。
ちょっとダルそうに返事をして、馬渕くんは江崎くんの元へむかった。
ふと、時計をみると、とっくに1時間が過ぎていた。
あと、1時間、どっちにしろ待っとかないかんけんなー。
でも、周り誰もいないんじゃ。
一人で勉強しようかなー。
そう言って、二人が来てくれた。
すごく嬉しかった。
私の声を遮ってまで言ってきた。
たぶん、遠回しに私を一人にしたいのだろう。
二人に問題を教え終えても、二人は麻生ちゃんの元へ戻らなかった。
事実だ。
さっき、馬渕くんに教えてた時も、すごく視線を感じてた。
たぶん、すごい目で睨まれてたのだろう。
今の顔もすごく不機嫌そうだから。
でも、私が馬渕くんを好きな以上、譲るわけにはいかなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。