僕には大好きな人がいる
あなた!! 僕の彼女さんですっ♡
あなたは、めっちゃ可愛くてね…♡♡
同じクラスの子なんだけど、フレンドリーでいっつも笑顔!!
そんなあなたに僕は恋しちゃったんだ♡
実は、あなたは、音楽祭で伴奏を弾くんですよ!!!
クラスの曲とあと何曲か…
大変だよね…
クラスの曲は僕覚えてるよ??
ー虹ー
キレイな曲。
・
帰り道
〈お疲れ様!!〉
「ありがとう〜」
広がる空を見ながら、いつも下校している。
いつもの登下校で汚れている僕らのスニーカー。
ただそこからは話が続かなくてただ時だけが流れて言った。
「じゃあ、ばぃばぃ!!」
そんなんで結局あなたの家に着いちゃったじゃんか…
〈うん、ばいばい!!〉
「また、明日!!」
そう言って、あなたは指を立てた。
いつもの癖。この癖、すごくかわいい♡
そこから1人で歩く道。僕は寂しかった。
やっぱりあなたがいないとダメなんだって…
僕、遠い空を探しちゃったよ。
明日はどうなるのかな…って
一緒に帰れた喜びと 話せなかった悲しみ。
その間には束の間っていう時があってね…
でも、今は悲しいの方が強い…
色のない世界。
まさにこんな感じ。
そんな世界の不確かなものを僕は…
─隠し持ってたりしないだろうか─
・
家に着いた。
1人で部屋にこもってみる。
考えるのは今日のこと。
とことん、落ち込んでる…のかもしれない。
僕らの出会いって何だったんだろうか。
会えたことは…奇跡だなぁ…
会った場所は、雨上がりの坂道。
僕らが別れることって考えられる??
考えられない。
自問自答。
僕らが会えなかったことも考えられない。
そんな事考えてるうちに時間は過ぎて
あなたが知らないであろう僕の住んでる街で
君のことを僕はずっと思ってるんだ。
・
次の日。
音楽祭練習。
いつ聞いてもキレイなあなたの伴奏。
でも、今日は少し調子が悪いかもしれない…
[ねぇ、あなたの伴奏下手くそじゃね!?]
[ほんと!! やる気あるのかな??]
[音楽祭はすぐなのに]
聞きたくない声が、僕の耳に入ってきた。
きっと、あなたの耳にも入ってるんだろう…
あなたを見る。顔が引きつっちゃってるよ…
・
放課後
あなたは、練習すると言って学校に残った。
今日のこと気にしてるのかな…
1人で歩く帰り道。久しぶり…。
風のようになってしまった今日の空白を
空々しい歌に乗せて…
僕は歌っている。全然楽しくない。
そんな気分じゃないもん…。
あなたは、音楽祭に向けて頑張ってたのに…
笑ってるはずだったのに…
あなたの喜びって何なんだろう
あなたの悲しみって何なんだろう
風に揺れるブランコを見て考えてみた。
でも、
あなたの喜びも
あなたの悲しみも
僕にはわからなかった…。
そんな帰り道。
明日へと続く不安げな空に色鮮やかな虹がかかっていた
雨が降ったからこそ、キレイにかかる虹。
あなたの思いが届いたのだろうか…
・
次の日。
あなたの伴奏はとっても上手になっていた。
練習したからこその話だと思うけど…
帰り道。
〈頑張ったじゃん!!〉
「え、そう??」
〈うん、僕はそう思うよ!!〉
「ゆぅりにそう言ってもらえてよかった。」
〈だって、いつも聞いてるもん!!〉
「ちゃんと歌ってよ〜笑」
〈ふぁ〜い!! 明日、頑張ろうね!!〉
そう、明日は音楽祭当日。
あなたの伴奏が成功しますように!!
「うん!! 頑張ろう!!」
・
当日。
「ゆぅり、緊張するよ…」
〈頑張れっ!! 応援してるよ!!〉
「ねぇ、ぎゅってして!?」
かわいい…♡♡
ギュッ…
〈大好きだよ…〉
「え、なんて言った??」
〈え、もー言わないもん〜!!〉
「ゆぅり、顔真っ赤…」
そりゃ、仕方ないよね!?
あなたが可愛すぎるのが悪いもん…
〈とりあえず、がんばって!!〉
・
「ゆぅりくん!! これっ!!」
僕達のクラスは無事歌いきって、優秀賞貰えたんだ!!
最優秀賞取れなくて悔しかったけど…
でもね、あなたは伴奏者賞貰ったんだよ!?
すごいよねっ!!
〈おめでとう!!〉
僕達、これからデート行ってきますよ♡
僕達が出会えたことも
僕達が出会えなかったとしてってことも
もう考えなくていい。
こんなに素敵な時間が待ってるんだから。
徒に時は流れていった。
僕達に光を残して。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。