あなたがケイン達と別れ、一人家路についている時。
あなたの後ろには、二つの人影があった。
「ほんっとに、ケイン兄さんも人が悪いよな~。一言彼女を連れてくるって言えばいいのに。」
「僕とケイトと兄さんの三人であなたに会いに行くかと思ってたのに。僕たちとは別行動だもんね。」
「ケイナ兄さん、あなたと話したかった?」
「そりゃあね。僕の初恋の人だもん。ケイトはあなたのこと、あんまり覚えてないんだっけ。」
「まあ俺その時めっちゃガキだったし。あーでも、すごい優しい人だった…気がする。」
―――人影の正体は、ケインの弟であるケイナとケイト。
二人はあなたの夕暮れに染まる背中を見つめながら、そんな会話をしていた。
「でも俺たち来週には引っ越しでしょ?父さんもう新しい物件決めたっていうし。その時にまた会えるよ。」
「そうだね。その時まで話をするのは楽しみに取っておくよ。」
飄々とした態度のケイトと、落ち着きのある物腰柔らかなケイナ。二人の会話はテンポよく進んでいく。
「…じゃ、帰ろうかケイナ兄さん。」
「そうだね。じゃあまたね、あなたちゃん。」
ケイナはあなたの帰った道を振り返りそうつぶやくと、ケイトと共に改札へと向かった。
私は昨日の衝撃から立ち直れないまま、学校を終え帰宅していた。
「あぁあぁああもう、ほんとに昨日のアレはなんだったんだよぅうう!!!」
ベッドに突っ伏して足をジタバタさせて私は叫ぶ。叫んだ声は抱きかかえていた枕に押し殺された。
「ポンッ」
部屋にLINEの通知が鳴り響く。
「…誰だろ。」
私はスマホに手を伸ばし、通知画面をチェックする。
「…!?」
通知画面に表示された名前は「アイリ」
慌ててスマホを操作し、トーク画面を開く。
私に話したいこと???何だろう…すごく嫌な予感がする…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。