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第1話

夏樹の隠し事
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2017/10/11 13:36
夏樹
おはよ、あなた
私は知っている。
あなた

おはよう、夏樹

この人が、私に隠し事をしていることを。

そして、私に気づかれていないと思っていることも、私は知っている。

だから私は、それにつけ込んで気づかないふりをする。
夏樹
あなた?どうした、具合でも悪いのか?
あなた

ううん。なんで?

夏樹
なんか、顔色が悪かったから
変なところで、夏樹はいつも鋭い。

私の気持ちには疎いくせして。
あなた

そう?もしかしたら、朝食べたパンが腐ってたのかも

とっさに冗談で返す。

私はこうして、〝いつも通り〟を演じていく。
夏樹
はあ?いくらお前でも、それはないだろ
何言ってんだよ、夏樹が笑う。
あなた

うん。だって冗談だもん

何日も何日も〝いつも通り〟を演じているせいで、それが日常になってしまっている。

私は今日も、〝いつも通り〟笑う。
夏樹
冗談?ああ、要は嘘ってこと
あなた

嘘じゃないよ

夏樹
ああ、そう
夏樹は、過剰に嘘を嫌う。

それが例え、冗談だとしても。
あなた

あはは、ごめんね

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