カレーパンマンは怒った口調でそう言った。
みんなを信用しているからこその本音だったし、
みんなが優しいからってこんなワガママを通すのは悪いことだってことも知ってた。
でも、自分の内から湧いてくる欲に、逆らうことが出来ない。
頭がおかしくなったように私は吠えた。
もともと、現実世界の私は全然充実していなかった。
勉強でも部活でも失敗ばかりの出来損ないで、なんとなく損している気がしていた。
人間関係に悩んで何度か眠れぬ夜もあった。
自分の存在意義を考えても見い出せず、お風呂で泣いた日もあった。
結局逃げて二次元に没頭し、夢中になった。
心からの悲痛に応えるように、私はここで幸せを知った。
だからこそ、こんなワガママを口にしているのだ。
許してくれると信じて。
…だけどホントは、こういう返事を望んでいたのかもしれない。
怒鳴られた私の目が点になる。
チーズは私に駆け寄ってきた。
監督は神妙な面持ちで離れる。
みんなが悲しい顔で私を見る。
気づいたら私は泣いていた。
なんの飾り気もない素直で真っ直ぐな言葉に、思わず足がすくむ。
でもそれ以上に、嬉しかった。
偽マンは少し間を開けて言った。
みんながサヨナラを言った。
光に包まれる。
眩しい。
珍しい偽マンの笑顔に、思わず私はこう言っていた。
こいつは偽マンのはずなのに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。