「良かったらうちにおいで?」
手を差し伸べられ、私はその手にすがるしかなかった。
でもこれが…
恋の始まりだった。
お坊さんが永遠とお経を唱えているのを聞いている。
先日、私のお母さんとお父さんは交通事故に遭い、亡くなった。
事故の原因は相手の飲酒運転。
親が死んだ。なんて全く実感がない。
けど、家に帰ると誰もいない。誰も帰ってこない。
こんな毎日は嫌だった。
私はもう家族がいなかった。
お父さんとお母さんも一人っ子で、おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなっている。
このお葬式は、遠い親戚の方が手配してくれた。
「これからどうしたら良いのかな。」
これからずっと一人で、一人暮らし&バイト?
来年は受験生なのに…。
お葬式が終わり、私は座っていた。
もう何もしたくない。
何をしたら良いのかさえわからない。
私の中に魂が無いような気がした。
あぁ、本当に死んじゃったんだ。
今更悲しくなった。
けど、一筋の涙しか出なかった。
お父さんやお母さんの友達や、遠い親戚の人達が私に挨拶をする。
「もし、良かったらうちにおいで?」
不意にかけられた言葉に驚いて顔をあげた。
「え?」
「おいでよ」
優しく微笑む男性の顔は、太陽のように優しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。