5分くらいした時、不意に声をかけられた。
「もう寝た?」
「あ、まだです…」
「一つ聞いてもいい?」
「なんでしょうか?」
「なんであなたちゃんは、お葬式の時、泣いてなかったの?」
鳥肌が立った。
自分もわからない。
泣きたくても泣き方がわからない。見たいな。
「わか、りません…」
「わからない?」
「はい。」
「そうか…。」
「ねえ、あなたちゃん。あなたちゃんは、お父さんとお母さんが死んじゃった事が
まだ受け入れられないんだよ。
でも…。
ゆっくりでいい。
ゆっくりでも良いから、少しずつ一緒に前に進もう。
僕はずっとあなたちゃんのそばに居るから。」
私は自然と涙が溢れていた。
なんでかな。
多分、本当のことを言われたから。
死んでしまった事が受け入れられない。
でも…死んでしまった。という事実。
それは変えられない。
けど、達也さんは一緒に前に進もうって言ってくれた。
嬉しかった。
一緒に進んでくれる人がそばに居る。
そう考えると、気持ちが楽になった。
楽になったから泣いたのかもしれない、
お父さん、お母さんが死んじゃった事が受け入れられたから泣いたのかもしれない、
けど、私はずっと泣き続け、達也さんはずっと頭を撫でてくれた。
そして、気がついたら眠りについていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!