第29話

病室
1,088
2017/10/19 11:45
病院に入ると、まだ達也さんは寝ていた。

でも何もなくて本当に良かった。

救急車にいるって聞いた時、また私は1人になるのかなって怖かった。

1人になったからこそ、わかる事はたくさんある。

ご飯が美味しくない。

寝ても起きても1人。

行ってらっしゃい、行って来ます。ただいま、おかえり。そんな当たり前がなくなった。

そう、当たり前が突然なくなった。

そんな当たり前を取り戻してくれたのは達也さん。

達也さんは私にたくさんの当たり前をくれた。

達也さんには感謝してもしきれない。

ありがとう、達也さん。




しばらくすると、松本さんが入って来た。

「ごめん、あなたちゃん、俺は一回戻んなきゃ行けなくなったから、

これ食べて一緒にいてやってくれないか?」

とコンビニの袋を渡された。

袋の中には、飲み物とおにぎり、お菓子などが入っていた。

「あ、ありがとうございます。わかりました。」

「じゃあ、」

と出て行ってしまった。

「そういえば夜ご飯食べてないや…。」

今はもうすぐ7時になる。

でも、達也さんは入院することなく、起きたら帰って良いよ。と先生から言われたので、

もし、起きた一緒にご飯を食べて帰った方が良いのかな?と思い、食べないで待っていた。



それから30分後…



「うぅ…」

と達也さんがゆっくりと目を開けた。

「あ!達也さん!わかりますか?」

と声をかける。

「あれ…?ここは…?」

「ここは病院です。何があったか覚えてますか?」

「えっと、現場で爆発して、それで吹き飛ばされて…」

良かった、ちゃんと意識はあるようだった。

「覚えてるみたいですね、良かった」

と微笑む。

すると、不安そうに達也さんが言う。






「あの…」







「誰…ですか…?」







「え…」





頭が…真っ白になった。

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