病院に入ると、まだ達也さんは寝ていた。
でも何もなくて本当に良かった。
救急車にいるって聞いた時、また私は1人になるのかなって怖かった。
1人になったからこそ、わかる事はたくさんある。
ご飯が美味しくない。
寝ても起きても1人。
行ってらっしゃい、行って来ます。ただいま、おかえり。そんな当たり前がなくなった。
そう、当たり前が突然なくなった。
そんな当たり前を取り戻してくれたのは達也さん。
達也さんは私にたくさんの当たり前をくれた。
達也さんには感謝してもしきれない。
ありがとう、達也さん。
しばらくすると、松本さんが入って来た。
「ごめん、あなたちゃん、俺は一回戻んなきゃ行けなくなったから、
これ食べて一緒にいてやってくれないか?」
とコンビニの袋を渡された。
袋の中には、飲み物とおにぎり、お菓子などが入っていた。
「あ、ありがとうございます。わかりました。」
「じゃあ、」
と出て行ってしまった。
「そういえば夜ご飯食べてないや…。」
今はもうすぐ7時になる。
でも、達也さんは入院することなく、起きたら帰って良いよ。と先生から言われたので、
もし、起きた一緒にご飯を食べて帰った方が良いのかな?と思い、食べないで待っていた。
それから30分後…
「うぅ…」
と達也さんがゆっくりと目を開けた。
「あ!達也さん!わかりますか?」
と声をかける。
「あれ…?ここは…?」
「ここは病院です。何があったか覚えてますか?」
「えっと、現場で爆発して、それで吹き飛ばされて…」
良かった、ちゃんと意識はあるようだった。
「覚えてるみたいですね、良かった」
と微笑む。
すると、不安そうに達也さんが言う。
「あの…」
「誰…ですか…?」
「え…」
頭が…真っ白になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。