第32話

アモーレ
1,032
2017/10/21 06:00
「お邪魔します。」

「どうぞ。」

松本さんと清水さんのお家は一軒家だった。

すごく広いお家。

「広い…」

と呟くと、ははっと笑った。

「ここはシェアハウスだからね。アモーレって名前なんだ。」

「アモーレって言うのは、イタリア語で愛とか、恋、愛する人を意味するらしい。」

「大家さんがそうゆうのが好きだから。」

「素敵ですね…。」

心がズキンと痛んだ。

愛、恋…。

好き…。

この、たった二文字が言えない。

達也さん…。





「じゃあ、まずはご飯を食べよう。」

「はい。」

「あ、でも、あなたちゃんは先にお風呂に入っておいで。」

「えっ、でも…」

食事を作るのを手伝った方が…。

「大丈夫。僕は達也より料理うまいし、お風呂に入って、落ち着いて。」

と私の心が見えるかのように、優しく言ってくれた。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」




服を脱いでお風呂へ浸かる。

今日1日でいろんなことがあった。

なんて、この前も思ったなぁ。

達也さんに“おいで”って言われた時。

嬉しかった…。




もうそろでようかな…

と立ち上がる。

あ、そういえば着替え…。

と思った。

すると、コンコンと洗面所のドアが開き、

「こんにちは。初めまして。」

とお風呂の外、洗面所から聞こえた。

えっ?女の人の声…?

「えっと…。」

と戸惑っていると、

「ここの、ルームシェアを一緒にしてるの。」

と言った。

「あ、そうだったんですか。初めまして。」

2人で暮らすには広すぎるなぁ、と思っていたから納得できた。

「澤口茜(さわぐち あかね)よ。よろしくね。」

「はい、小宮あなたです。よろしくお願いします!」

優しそうな声。

「着替えは、私のを貸してあげるからきてね。あ、下着はまだ着てないから。」

「あ、ありがとうございます!」

「そうだ。あと、洗濯機と乾燥機とか自由に使って良いよ!」

「はい。」

というとすぐに出て行ってしまった。

私もそれに続くようにお風呂から出た。



「お風呂、ありがとうございました。」

とキッチンを覗く。

「あぁ、服借りれた?良かったね」

と清水さんが振り返る。

「はい。」

と周りをみると、

ソファの方に誰か女の人が2人座っていた。

茜さんかな?

茜さんにお礼を言おうと思い。近く。

「あの…」

と言うと、こちらを見て、

「あ!私さっきの茜だよ〜。」

と明るく話しかけてくれた。

もう1人の方は、

「初めまして、斉藤美由紀。よろしくね!」

とこちらも明るく話しかけてくれた。

「小宮あなたです。よろしくお願いします。」

「あ、そうだ。茜さん、着替えありがとうございました!」

「もう〜、そんなに堅くならなくて良いから!茜でいいよ!」

「あ!私も美由紀でいいから!」

2人とも元気良くて、仲良くなれそうだなぁ。と思った。

そうは言ってくれたものの呼び捨てにするのは…。と思ったので、

「じゃあ、茜ちゃんと美由紀ちゃんで。」

「ok!」

「うん!」

と言ってくれた。

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